~構造設計者こーじの構造解説blog~

一級建築士の構造解説・過去問解説を行っています。某組織設計事務所9年→構造設計事務所。10年目。

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仮想仕事法について(1)エネルギー保存則について

 以前、モールの定理について解説していきましたが、モールの定理のよる求め方はあくまで梁などの直線部材の変位を求める際に用いる解法です。ただし、ラーメン構造などの柱と梁で構成された架構に対しては、材軸方向が異なるためモールの定理では求めることができません。
 このような材軸方向が異なる部材が組み合わされた架構に力が作用した場合の変位を求める方法として「仮想仕事法」があります。ちょっと難解な部分も多いので一度読んでみてわからない方は、最低限解き方を理解してください。

 まずは、仮想仕事法を学ぶ上での前段の知識となる「エネルギー保存則」についてです。

 

 
 エネルギー保存則の考え方
 

 仮想仕事法は、力の釣り合いが成立する場合において「外力のなす仕事量(力×変位)の総和」が「内力のなす仕事量の総和」と等しいとするエネルギー保存則に基づく方法により求めていきます。いきなり難しい言葉がズラズラ出てきていますが、まず「仕事量」について説明していきます。物体に力Pが作用した時に変位δだけ変形した場合、「力Pは部材に仕事をする」と表されます。この仕事の量を定量的に表す量を仕事量Wと言います。この仕事量Wは、

  W=P×δ

と力Pと変位δの掛け算で求めることができます。

 また、「外力」と「内力」については、下記の通りとなります。

  外力:外部から作用する力(問題で与えられているPなどの力)
  内力:作用する外力によって発生する曲げモーメント、せん断力、軸力

 ちょっと難しいかもしれませんが、大事なところとしては、力の釣り合いが成立する場合は、その部材に作用している力(集中荷重PやモーメントM)による仕事量の合計と力によって発生した応力(曲げモーメント、せん断力、軸力)による仕事量の合計は等しいということです。

 

 
 「外力のなす仕事量」と「内力のなす仕事量」
 

 ここからは、「外力のなす仕事量We」と「内力のなす仕事量Wi」について考えていきます。

 「外力のなす仕事量We」は、仕事量でも説明したように外部から作用する力Pが作用した場合に変位δだけ変形したとすると、W=P×δと表されます。また、モーメント荷重Mが作用した場合に回転角θだけ変形する場合は、W=M×θと表されます。

よって、集中荷重P1,P2,P3,…,Pnの各作用点の変位をδ1,δ2,δ3,…,δnとし、モーメント荷重M1,M2, M3,…,Mnの各作用点の回転角をθ1,θ2,θ3,…,θnとすると、外力のなす仕事量Weは、下式で表されます。

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一方、「内力のなす仕事量Wi」は、曲げモーメント、せん断力、軸力の各応力と各応力によって発生する変位を掛けたものが内力となります。各応力に対する変位としては、

曲げモーメントM ⇒ 曲率φ
せん断力Q    ⇒ せん断ひずみγ
軸力N      ⇒ 鉛直ひずみε

となります。よって長さlの部材の内力のなす仕事量は下式で表されます。

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また、それぞれの応力と変形の関係式は、下式となります。

  M=EIφ、 Q=GAγ、 N=EAε

 よって、応力と変形の関係式を仕事量の式に代入すると、「内力のなす仕事量Wi」は下式となります。

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エネルギー保存則より、外力のなす仕事量Weと内力のなす仕事量Wiは等しいので、下式が成り立ちます。

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 柱梁のラーメン架構などの通常の骨組では、曲げ変形に比較してせん断変形や軸変形が小さいため、曲げ変形のみの仕事量を考慮して求めることが多いです。また、トラス構造では、軸力のみを負担することから、軸変形のみを考えます。よって、

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と表すことができます。