ここでは積雪荷重について解説していきます。積雪荷重は、一般の区域と雪が多く降る多雪区域があり、多雪区域の地域及び鉛直積雪量等については各特定行政庁の建築基準法施行細則で定められています。
また、近年の一般の区域における積雪による屋根崩落の被害が発生したことを受けて法改正が行われています。一定規模の緩勾配屋根では積雪荷重の割増す必要があり、平成31年1月に施行されています。
積雪荷重 Sは、建築基準法施行令第86条より、下式で求めることができます。
S=ρ×d×A (式2.3.1)
ここで、ρ:積雪の単位荷重(N/cm/㎡)は、積雪量1cm毎の1㎡当たりの荷重で20N/cm/㎡以上となります。
また、d:鉛直積雪量(cm)は、国土交通大臣が定める基準に基づき、各特定行政庁の建築基準法施行細則内で数値が定められています。
ρ×dにより単位面積当たりの積雪荷重(N/㎡)が求められるので、これにA:屋根の水平投影面積を掛けることで積雪荷重を算出することができます。
屋根の積雪荷重は、雪止めがある場合を除いて屋根勾配に応じて下式によって求める屋根形状係数μbを掛けた数値(低減された積雪荷重)とすることができます。屋根勾配により屋根の上に載っている雪が滑落することを想定した低減係数となります。
μb=√cos(1.5β)(式2.3.2)
屋根勾配βが0~60度までは、角度に応じて低減係数を考慮し、60度を超える場合は屋根勾配が急であることから積雪荷重を0とすることができます。
また、屋根形状係数μbにより積雪荷重を低減する場合は、雪が確実に滑落するように屋根裏を暖房する等、配慮する必要があります。
雪が多く降る地域では、国土交通大臣が定める基準に基づき、各特定行政庁が多雪区域としてその区域を指定し、積雪の単位荷重や鉛直積雪量が指定されています。また、国土交通大臣が定める多雪区域に該当する基準としては、下記のうちのいずれかとなります。
・鉛直積雪量が1m以上の区域
・積雪の初終間日数(当該区域中の積雪部分の割合が1/2を超える状態が継続する期間の日数)が30日以上の区域
また、多雪区域内において雪下ろしを行う慣習のある地方については、雪下ろしの状況に応じて、鉛直積雪量を1mまで低減することができます。この低減を考慮する場合は、建築物の出入り口、主要な居室又はその他見えやすい場所に、その低減の実況等を表示する必要があります。
平成26年2月の関東甲信地方を中心とした積雪後の降雨により、体育館等の緩勾配屋根やカーポートの倒壊の被害が発生しました。
屋根が崩落してしまった理由としては、積雪後の降雨により、屋根に残っている雪が水分を吸ってしまうことで、想定以上の積雪荷重となる為です。この被害を受けて、多雪区域以外の区域において、積雪後の降雨の影響を考慮して割り増した積載荷重により構造計算を行う(一定の建築物には積雪後の降雨を考慮した割り増し係数αを乗じる)ように告示が改正となり、平成31年1月に施行されています。
積雪荷重を割り増す必要のある建築物は、下記のいずれにも該当する場合となります。
・多雪地域以外の区域にある建築物(鉛直積雪量が15cm以上に限る)
・下記の屋根を有する建築物
・大スパン(棟から軒までの長さが10m以上)
・緩勾配屋根(屋根勾配が15度以下)
・屋根荷重が軽い(屋根版がRC造又はSRC造でないもの)