平成26年の「温浴施設のある道の駅」の沖縄試験及び平成27年の「市街地に建つデイサービス付き高齢者向け集合住宅」において、要点の記述の構造計画において出題された「目標耐震性能」について、これから解説していきます。
というのも、そろそろ出てもおかしくないのかなと個人的に思っているのと、なかなか良く分からないと人が多いと思うので…
まず、過去に出題された設問についてみてみると、
「建築物に設定した目標耐震性能(地震力の程度と建築物の状態)」について記述することと問われています。
まず、「目標耐震性能」とは、想定する地震力に対して建築物の損傷がどの程度とするか(耐震性能)の目標を設定することです。
つまり、設問で聞かれている内容は、
①想定する地震力の程度⇒どのような地震を想定するか?
②想定した地震力に対して建築物の損傷の程度(状態)⇒想定した地震に対して、どのくらいの建物の損傷に抑えるか?
について問われており、これらの設問に対して回答をする必要があります。
…と言われても、じゃあ一体どうすればいいの??となると思いますが、下記について参考にして考えてみます。
下表に、「官庁施設の総合耐震・対津波計画基準(平成25年版)(以下、官庁基準)」より、大地震時に対する構造体の耐震安全性の目標について記載されています。
ここで記載されている内容とは、大地震時が発生した際の官庁施設(庁舎、学校、病院等の公共施設)の施設(建物)の重要度に応じた耐震安全性の目標(=構造体の状態)を設定しており、Ⅰ類~Ⅲ類の三種類に分類されています。
まず、「大地震」とは、「建築物の構造関係技術基準解説書(通称、黄色本)」の中で「極稀に発生する地震(数百年に一回程度発生する可能性のある地震)」とされています。ちなみに、この大地震時を想定した計算が、「二次設計」(一般的には保有水平耐力計算が多いです。)となります。
※これは余談ですが、よく大地震って震度いくつ?って聞かれますが、地震の大きさと震度との関係は明確に記載れていないので、何とも言えませんが、概ね震度6弱~6強程度と言われています。
この大地震(極稀に発生する地震)に対して、建物の重要度に応じた耐震安全性の目標を設定していきます。表にも書いていますが分かりにくいと思うので、Ⅰ類からⅢ類までの各分類に当てはまる施設について挙げてみます。
Ⅰ類:庁舎等の行政機関の重要施設、災害拠点病院、放射線関係建物、病原菌等の検査所・研究所
⇒災害時にも機能を継続しないといけないので超大事な建物!!
Ⅱ類:Ⅰ類以外の行政機関施設、病院施設、学校施設、社会福祉施設(高齢者介護施設はここ!!)、社会教育施設(コミュニティーセンター等)
⇒Ⅰ類ほどではないけど、不特定多数の人々が利用する大事な建物!!
Ⅲ類⇒一般官庁施設(小規模な付属建物とかかな?)
今回の課題の「高齢者介護施設」は、Ⅰ類ほどの重要性が高い建物ではありませんが、不特定多数の人々が利用することから、「Ⅱ類」に該当すると考えられます。
※基本的に、一級建築士製図試験で出題される建物用途では、Ⅱ類に該当することが多いです。
つまり、大地震に対して「構造体の大きな補修をする必要がなく建物を使用できること」を目標とし、人命の安全確保に加えて機能確保が図られる建築物の状態とする必要があります。