~構造設計者こーじの構造解説blog~

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一級建築士試験 構造Ⅳ【平成27年(2015年)No.7~No.10】【荷重・木造】

〔N o.7〕建築基準法における建築物に作用する地震力に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.建築物の地上部分における各層の地震層せん断力係数Ciは、最下層における値が最も大きくなる。

2.地下部分の地震層せん断力は、「地下部分の固定荷重と積載荷重との和に、当該部分の地盤面からの深さに応じた水平震度kを乗じて求めた地震力」と「地上部分から伝わる地震層せん断力」との和である。

3.建築物の設計用一次固有周期Tが長い場合、第一種地盤より第三種地盤のほうが建築物の地上部分に作用する地震力は大きくなる。

4.第一種地盤で、建築物の設計用一次固有周期Tが長い場合、振動特性係数RTの値は、Tが長くなるほど小さくなる。

 

1.建築物の地上部分における各層の地震層せん断力係数Ciは、最下層における値が最も大きくなる。

<解説>

答は×

各層の地震層せん断力係数Ciは、

Ci=Z×Rt×Ai×Co

で求めることができます。このうち、「地震地域係数:Z」と「振動特性係数:Rt」と「標準せん断力係数:Co」は各層に関わらず同じ値となります。

また、「高さ方向の層せん断力係数の分布:Ai」は、上階ほど鞭打ちのような振動の減少を表した係数であり、上階に行くほど数値は大きくなります。よって、地震層せん断力係数Ciは、最下層における値が最も小さくなります。

※地震層せん断力係数Ciは最下階が一番小さくなりますが、各階の層せん断力Qi=ΣW×Ciは、最下階が一番大きくなります。地震層せん断力係数Ciと層せん断力Qiの違いに注意してください。

 

2.地下部分の地震層せん断力は、「地下部分の固定荷重と積載荷重との和に、当該部分の地盤面からの深さに応じた水平震度kを乗じて求めた地震力」と「地上部分から伝わる地震層せん断力」との和である。

<解説>

答は

地下部分の地震層せん断力は、地下部分の地震力+地上部分の地震力となります。

地下部分の地震力:「地下部分の固定荷重と積載荷重との和に、当該部分の地盤面からの深さに応じた水平震度kを乗じて求めた地震力(=(固定荷重+積載荷重)×水平震度)」

地上部分の地震力:「地上部分から伝わる地震層せん断力」

 

3.建築物の設計用一次固有周期Tが長い場合、第一種地盤より第三種地盤のほうが建築物の地上部分に作用する地震力は大きくなる。

<解説>

答は

振動特性係数Rtは、建築物の固有周期が長くなるほど小さくなります。

また、地盤の種類に応じて振動特性係数Rtの低減の度合いが変わり、第一種地盤よりも第三種地盤の方が低減の度合いが小さくなります。つまり、振動特性係数Rtの大きさの大小は、

第3種地盤(軟弱地盤)>第2種地盤(普通地盤)>第1種地盤(硬質地盤)

となります。

 

4.第一種地盤で、建築物の設計用一次固有周期Tが長い場合、振動特性係数RTの値は、Tが長くなるほど小さくなる。

<解説>

答は

振動特性係数Rtは、地盤と建築物の共振特性を考慮した係数のことです。

一般的には、地盤よりも建築物の固有周期のほうが長いです。そのため、建築物の固有周期が長くなるほど地盤の固有周期との差が大きくなることで、共振が生じにくくなり、地震力が小さくなります(=振動特性係数Rtが小さくなります)。

※設問3の図を参照してください。

 

〔N o.8〕建築物の構造計算に用いる荷重に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.多雪区域において、暴風時に考慮すべき積雪荷重は、短期の積雪荷重を低減して用いることができる。

2.教室に連絡する廊下や階段の床の積載荷重は、実況に応じて計算しない場合、教室の床の積載荷重と同じ値を用いることができる。

3.建築物の各部の積載荷重は、「床の構造計算をする場合」、「大梁・柱・基礎の構造計算をする場合」及び「地震力を計算する場合」において、それぞれ異なる値を用いることができる。

4.一般的な鉄筋コンクリートの単位体積重量は、コンクリートの単位体積重量に、鉄筋による重量増分として1kN/m3を加えた値を用いることができる。

 

1.多雪区域において、暴風時に考慮すべき積雪荷重は、短期の積雪荷重を低減して用いることができる。

<解説>

答は

多雪地域では、暴風時にも積雪荷重を考慮する必要があります。

ただし、積雪荷重を考慮する荷重の大きさは、積雪荷重(1.0S)を全て考慮するのではなく、0.35S(積雪時に考慮する積雪荷重の0.35倍の荷重)を考慮します。

 

暴風時=G+P+0.35S+W

G:固定荷重、P:積載荷重、S:積雪荷重、W:風荷重

 

2.教室に連絡する廊下や階段の床の積載荷重は、実況に応じて計算しない場合、教室の床の積載荷重と同じ値を用いることができる。

<解説>

答は×

教室に連絡する廊下や階段の床の積載荷重は、授業の終了後や災害等の避難時などで一時的に人が密集することがある為、「集会場(その他)=固定席の無い集会場」の積載荷重とします。

 

3.建築物の各部の積載荷重は、「床の構造計算をする場合」、「大梁・柱・基礎の構造計算をする場合」及び「地震力を計算する場合」において、それぞれ異なる値を用いることができる。

<解説>

答は

積載荷重は、「床の構造計算をする場合(床・小梁用)」、「大梁・柱・基礎の構造計算をする場合(架構用)」及び「地震力を計算する場合(地震用)」3種類の荷重があります。

詳細については、下記のブログが参考となります。

 

2-2 長期荷重 ~固定荷重と積載荷重~

 

簡潔に説明すると、荷重の集中や偏在等の度合いを考慮して、3つの積載荷重は異なる数値として設定されています。

 

4.一般的な鉄筋コンクリートの単位体積重量は、コンクリートの単位体積重量に、鉄筋による重量増分として1kN/m3を加えた値を用いることができる。

<解説>

答は

鉄筋コンクリートの単位体積重量は、コンクリートの単位体積重量に鉄筋による重量増分として1kN/m3を加えた値とすることが一般的です。

 

〔N o.9〕木造軸組工法による地上2階建ての建築物に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.地盤が著しく軟弱な区域として指定する区域内において、標準せん断力係数Coを0.3として、地震力を算定した。

2.風による水平力に対して必要な耐力壁の量は、建築物の階数及び床面積に基づいて算定した。

3.1階の耐力壁と2階の耐力壁を、市松状に配置した。

4.引張力のみを負担する筋かいとしたので、厚さ1.5cm、幅9cmの木材を使用した。

 

1.地盤が著しく軟弱な区域として指定する区域内において、標準せん断力係数Coを0.3として、地震力を算定した。

<解説>

答は

標準せん断力係数Coの値は、中地震を想定した一次設計では0.2以上とします。ただし、地盤が著しく軟弱な区域として指定されている区域内の木造建築物では、一次設計時に用いる標準せん断力係数Coは0.3以上とします。

 

2.風による水平力に対して必要な耐力壁の量は、建築物の階数及び床面積に基づいて算定した。

<解説>

答は×

風圧力に対して必要な耐力壁の有効長さは、風を受ける面の見付面積(床面からの高さが1.35m以下の部分を除く)にその地方に規定された数値を乗じて求めます。そのため、床面積は関係しません。

※設問の内容は、地震力に対して必要な耐力壁の有効長さを求める方法です。

 

3.1階の耐力壁と2階の耐力壁を、市松状に配置した。

<解説>

答は

2階の耐力壁と1階の耐力壁を市松状となるように設置すると、引張力・圧縮力が生じる2階の耐力壁付きの柱の下部の1階の柱にも耐力壁が取り付いていることになるので、有効となります。

 

4.引張力のみを負担する筋かいとしたので、厚さ1.5cm、幅9cmの木材を使用した。

<解説>

答は

引張力のみを負担する筋かいは、「厚さ1.5cm、幅9cmの以上の木材」又は「径9㎜以上の鉄筋」を用います。

また、圧縮力と引張力の両方を負担する筋かいは、「厚さ3㎝以上で幅9㎝以上の木材」を用います。

 

〔N o.10〕図のような木造軸組工法による地上2階建ての建築物(屋根は日本瓦葺とし、1階と2階の平面形状は同じであり、平家部分はないものとする。)の1階において、建築基準法に基づく「木造建築物の軸組の設置の基準」(いわゆる四分割法)によるX方向及びY方向の壁率比の組合せとして、最も適当なものは、次のうちどれか。ただし、図中の太線は耐力壁を示し、その壁倍率は全て2とする。なお、壁率比は次の式による。

<解説>

答の設問は3

下端部のX方向 X1=2m×2/(2m×4m)=0.5

上端部のX方向 X2=4m×2/(2m×8m)=0.5

左端部のy方向 Y1=2m×2/(8m×2m)=0.25

右端部のy方向 Y2=2m×2/(2m×4m)=0.5

「壁率比」は壁量充足率の小さいほうを大きいほうで割った値となります。

X方向:0.5/0.5=1.0

Y方向:0.25/0.5=0.5