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一級建築士試験 構造Ⅳ【令和元年度(2019年度)No.9~No.10】【木造】

 

〔No. 9 〕木造軸組工法による地上2 階建ての建築物の壁量の計算に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1 .平面が長方形の建築物において、必要壁量が地震力により決定される場合、張り間方向と桁行方向の必要壁量は異なる値となる。

2 .風圧力に対する2 階の必要壁量は、2 階床面からの高さ1.35 mを超える部分の見付面積に所定の数値を乗じて得た数値となる。

3 .壁倍率2 の耐力壁の長さの合計が9 mの場合の存在壁量と、壁倍率3 の耐力壁の長さの合計が6 mの場合の存在壁量は同じ値となる。

4 .壁倍率1.5 の筋かいを入れた軸組の片面に、壁倍率2.5 の構造用合板を所定の方法で打ち付けた耐力壁の壁倍率は4 となる。

 

1 .平面が長方形の建築物において、必要壁量が地震力により決定される場合、張り間方向と桁行方向の必要壁量は異なる値となる。

<解説>

答は×

地震力により定まる必要壁量は、壁や屋根の仕上げの種類(重量)に応じた単位面積当たりの必要壁量を掛けた値で算出されます。地震力は、加力方向に関わらず同じ値であることから、地震力により定まる必要壁量も加力方向に関わらず同じ値になります。

 

2 .風圧力に対する2 階の必要壁量は、2 階床面からの高さ1.35 mを超える部分の見付面積に所定の数値を乗じて得た数値となる。

<解説>

答は○

風圧力に対する2 階の必要壁量は、2 階床面からの高さ1.35 mを超える部分の見付面積に所定の数値を乗じて得た数値となります。

引用文献:「よくわかる基準法 壁量計算」より

https://jutaku.homeskun.com/assets/media/contents/yokuwakaru/kaberyo.pdf

 

3 .壁倍率2 の耐力壁の長さの合計が9 mの場合の存在壁量と、壁倍率3 の耐力壁の長さの合計が6 mの場合の存在壁量は同じ値となる。

<解説>

答は○

存在壁量の計算は、耐力壁または筋交いを計画した軸組の長さに壁倍率を乗じて計算します。
どちらも壁長さと壁倍率の積をとると18mとなり存在壁量は等しくなります。

壁長さ9m × 壁倍率 2=18m

壁長さ6m × 壁倍率 3=18m

 

4 .壁倍率1.5 の筋かいを入れた軸組の片面に、壁倍率2.5 の構造用合板を所定の方法で打ち付けた耐力壁の壁倍率は4 となる。

<解説>

答は○

筋かいを入れた軸組の片面に構造用合板を計画する場合、耐力壁の壁倍率は両者の和とすることができます。よって、

筋かいの壁倍率1.5 + 構造用合板の壁倍率2.5=4

とすることができます。ただし、壁倍率の上限は5.0となります。

 

〔No.10〕木造軸組工法による地上2 階建ての建築物に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1 .構造耐力上主要な柱について、やむを得ず柱の所要断面積の1/3を切り欠きしたので、切り欠きした部分が負担していた力を伝達できるように金物で補強した。

2 .圧縮力と引張力の両方を負担する筋かいとして、厚さ1.5 cm、幅9 cmの木材を使用した。

3 .国土交通大臣が定める基準に従った構造計算によって構造耐力上安全であることを確かめたので、小屋組の振れ止めを省略した。

4 .構造耐力上主要な柱の小径を、横架材の相互間の垂直距離に対する割合によらず、国土交通大臣が定める基準に従った構造計算によって決定した。

 

1 .構造耐力上主要な柱について、やむを得ず柱の所要断面積の1/3を切り欠きしたので、切り欠きした部分が負担していた力を伝達できるように金物で補強した。

<解説>

答は○

構造耐力上主要な柱を切り欠く場合は、原則、柱の断面積の1/3以下とします。やむを得ず、柱の断面積の1/3を超える切り欠きをする場合は、切り欠きした部分が負担していた力を伝達できるように金物で補強します。

 

2 .圧縮力と引張力の両方を負担する筋かいとして、厚さ1.5 cm、幅9 cmの木材を使用した。

<解説>

答は×

引張力のみを負担する筋かい材は、「厚さ1.5cm、幅9.0cm以上の木材」もしくは「径9mm以上の鉄筋」を用います。
しかし、圧縮材と引張材の両方を負担する筋交い材は、「厚さ3.0cm、幅9.0cm以上の木材」とする必要があります。これは、圧縮材として利用する場合、筋かい材が座屈することを考慮して、引張力のみ負担する場合と比べて、厚くなっています。よって、設問の断面では、厚さが不足しています。

 

3 .国土交通大臣が定める基準に従った構造計算によって構造耐力上安全であることを確かめたので、小屋組の振れ止めを省略した。

<解説>

答は○

構造計算を行わない場合は、小屋組の振れ止めを計画しなければいけませんが、構造計算によって構造耐力上安全であることを確認した場合は、省力することができます。

 

4 .構造耐力上主要な柱の小径を、横架材の相互間の垂直距離に対する割合によらず、国土交通大臣が定める基準に従った構造計算によって決定した。

<解説>

答は○

構造耐力上主要な柱の小径は、構造計算を行わない場合、建築基準法施行令第43条にて定められている用途や屋根材の種類等に応じて、横架材の相互間の垂直距離の1/33~1/20以上とすることが定められています。

ただし、国土交通大臣が定める基準に従った構造計算を行って構造耐力上安全であることを確認した場合は、計算によって求めた柱の小径とすることができます。