学科試験のの過去問で、
地震時にねじれが生じないようにするため、重心と剛心との距離をできるだけ小さくなるように計画する。
といった設問をみることがあると思います。この設問でポイントとなるのが、重心と剛心の関係になります。
重心と剛心が近い方がいいのかor離れている方がいいのか。また、この2つの用語と深い関係である偏心率についても合わせて解説していきます。
「重心」とは、平面上における建物重量の中心のことです。板などを指で下から支えるとある点では板が倒れないまま支えることができると思いますが、その点が重心です。また、地震力は重心位置に作用します。
「剛心」とは、建物の剛性の中心のことであり、剛心を中心に回転しようとします。回転中心と思って頂いても宜しいです。
建物の重心と剛心の距離のことを「偏心距離」と呼びます。偏心距離が大きくなってしまうと、建物がねじれてしまい一部分に力が集中することで、建物が損傷する恐れがあります。
この「ねじれ」は、どのように起きるかと言うと、地震力は重心に作用しますが、剛心を中心に建物は回転(変形)しようとします。そのため、図1のように偏心距離が大きくなってしまうと、剛心から離れた側が大きく変形しねじれが生じてしまうのです。
偏心率とは、重心と剛心のずれ(偏心距離)の程度を表したものです。偏心率の求め方はとても大変なのでここでは省略します。建築基準法では、偏心率を0.15以下とすることを基準としており、0.15を超える場合は、一定規模以上の建物はルート3で計算を行う場合もあります。また、ルート3で計算する場合、Fesの割増しが必要となります。
また、どのような場合に偏心率が大きくなるかというと、図1のように重心が中央にあるのに対して、左側に耐震壁のような剛性の高い部材が存在する場合、剛心は剛性の高い左側へ寄ってしまいまい、偏心率が大きくなります。
今回のポイント
重心とは、建物の重さの中心位置。重心位置に地震力が作用する。
剛心とは、建物の剛性の中心位置。剛心を中心に回転しようとする。
偏心距離とは、重心と剛心の離れている距離。偏心距離が大きいと建物はねじれてしまう。
偏心率とは、重心と剛心のずれ(偏心距離)の程度を表したもの。偏心率が大きいほど、偏心距離は大きくなる。建築基準法上は、偏心率0.15以下とすることを基準としている。