~構造設計者こーじの構造解説blog~

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一級建築士試験 構造Ⅳ【平成25年(2013年)No.11~No.15】【鉄筋コンクリート造】

 

〔N o.11〕鉄筋コンクリート構造の部材の性能に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.柱の曲げ剛性を大きくするために、引張強度の大きい主筋を用いた。

2.耐力壁のせん断剛性を大きくするために、壁の厚さを大きくした。

3.梁の終局せん断強度を大きくするために、あばら筋の量を増やした。

4.耐力壁の終局せん断強度を大きくするために、コンクリートの圧縮強度を大きくした。

 

1.柱の曲げ剛性を大きくするために、引張強度の大きい主筋を用いた。

<解説>

答は

主筋を含む鉄筋は、引張強度(材料強度)を大きくしても、ヤング係数は変わりません。その為、柱の曲げ剛性も変化しません。

また、鉄筋コンクリート造部材の剛性は、コンクリート部分の断面のみで評価することが一般的です。これは、コンクリート断面に対して鉄筋の断面積が少ないため、鉄筋による剛性の影響は小さいものとして考えます。

 

2.耐力壁のせん断剛性を大きくするために、壁の厚さを大きくした。

<解説>

答は

耐力壁のせん断剛性を大きくするには、壁厚を厚くすると剛性が高くなります。

耐震壁は、主にせん断による変形となるため、剛性についてもせん断剛性として考えます。

 

3.梁の終局せん断強度を大きくするために、あばら筋の量を増やした。

<解説>

答は

柱の終局せん断耐力を高める方法は、

 ① 柱の断面を大きくする

 ② せん断補強筋を多く入れる(上限あり)

 ③ コンクリート強度を大きくする

の3つです。

 

4.耐力壁の終局せん断強度を大きくするために、コンクリートの圧縮強度を大きくした。

<解説>

答は

耐力壁の終局せん断強度を高める方法は、

 ① 壁厚を厚くする

 ② 壁の横筋を多く入れる(上限あり)

 ③ コンクリート強度を大きくする

の3つです。

 

〔N o.12〕鉄筋コンクリート構造に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.主筋の継手部で付着力伝達が十分に行えるようにするため、重ね継手の長さは、所定の数値以下となるようにする。

2.コンクリートの付着割裂破壊を抑制するため、鉄筋に対するコンクリートのかぶり厚さは、所定の数値以上となるようにする。

3.柱の主筋の座屈を抑制するため、帯筋の間隔は、所定の数値以下となるようにする。

4.耐力壁のひび割れの進展を抑制するため、壁筋の間隔は、所定の数値以下となるようにする。

 

1.主筋の継手部で付着力伝達が十分に行えるようにするため、重ね継手の長さは、所定の数値以下となるようにする。

<解説>

答は×

主筋の継手部は、主筋同士を継ぐ際に力を安全に伝達させる必要があります。重ね継手の場合、主筋同士の重なっている部分で力を伝達させています。重なっている長さが長ければ、より伝達できる力は大きくなります。よって、重ね継手の長さは、所定の数値以上としなければいけません。

 

2.コンクリートの付着割裂破壊を抑制するため、鉄筋に対するコンクリートのかぶり厚さは、所定の数値以上となるようにする。

<解説>

答は

付着割裂破壊は、異形鉄筋に引張力が作用した時に、異形鉄筋の節が周囲のコンクリートを押し広げようとすることにより、部材表面にひび割れが生じる破壊形式です。

かぶり厚さが小さいとコンクリートのかぶり部分でひび割れが発生しやすくなります(=付着割裂破壊が起きやすくなります)。そのため、かぶり厚さは所定の数値以上とする必要があります。

 

3.柱の主筋の座屈を抑制するため、帯筋の間隔は、所定の数値以下となるようにする。

<解説>

答は

帯筋は、柱のせん断耐力を高める目的があるとともに、主筋の座屈を抑える効果もあります。そのため、帯筋の間隔が狭いほどより主筋は座屈しにくくなります。

 

4.耐力壁のひび割れの進展を抑制するため、壁筋の間隔は、所定の数値以下となるようにする。

<解説>

答は

壁筋の間隔を密に配筋すると、ひび割れが分散して入ることで、ひび割れ1本のひび割れ幅を小さくすることができます。

 

〔N o.13〕鉄筋コンクリート造の建築物における部材寸法の設定に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.階高4mの耐力壁の厚さを、階高の1/40とした。

2.階高8mの正方形断面柱の一辺の長さを、階高の1/12とした。

3.一辺が4mの正方形床スラブの厚さを、スパンの1/25とした。

4.長さ1.5mのはね出しスラブの厚さを、はね出し長さの1/8とした。

 

1.階高4mの耐力壁の厚さを、階高の1/40とした。

<解説>

答は×

RC造の耐力壁の厚さは、内法高さの1/30以上かつ120㎜以上とする必要があります。

 

2.階高8mの正方形断面柱の一辺の長さを、階高の1/12とした。

<解説>

答は

RC造の柱の小径は、高さの1/15以上とする必要があります。

一辺の長さを階高の1/15とする必要がありますが、階高8mの柱の場合8000/15=533.34mm以上となりますが、柱の一辺の長さを階高の1/12とした場合、8000/12=666.67mmとなり、問題ありません。

 

3.一辺が4mの正方形床スラブの厚さを、スパンの1/25とした。

<解説>

答は

RC造のスラブ厚は、一般に短辺スパンの1/30超とする必要があります。

4mの床スラブの場合、4000/30=133.34mm以上とする必要がありますが、スラブ厚が短辺スパンの1/25の場合、4000/25=160mmとしている為、問題ありません。

 

4.長さ1.5mのはね出しスラブの厚さを、はね出し長さの1/8とした。

<解説>

答は

はね出しスラブの厚さは、はね出し長さの1/10超とする必要があります。

 

〔N o.14〕鉄筋コンクリート造の建築物において、図のような向きの鉛直荷重又は水平荷重を受けるときのひび割れ性状として、最も不適当なものは、次のうちどれか。

<ポイント>荷重によりひび割れが発生する場合、

曲げひび割れ⇒曲げモーメント図の引張方向にひび割れが発生。

せん断ひび割れ⇒

1.鉛直荷重による柱及び梁の曲げひび割れ

<解説>

答は

鉛直荷重による架構の曲げモーメント図は、下図の赤線ようになります。モーメント図は、引張方向に凸となります。曲げひび割れは、引張方向にひび割れが発生することから、曲げひび割れの向きは正しいです。

 

2.水平荷重による柱及び梁の曲げひび割れ

<解説>

答は×

水平荷重による架構の曲げモーメント図は、下図の赤線ようになります。モーメント図は、引張方向に凸となります。曲げひび割れは、引張方向にひび割れが発生することから、曲げひび割れの向きは間違いです。

 

3.水平荷重による耐震壁のせん断ひび割れ

<解説>

答は

水平荷重による架構の変形は、下図の青線ようになります。その際、耐震壁は、菱形に変形することで、赤矢印の方向へ引っ張られます。そのため、引っ張られる方向の直行方向にせん断ひび割れが発生します。よって、ひび割れの向きは正しいです。

 

4.水平荷重による梁のせん断ひび割れ

<解説>

答は○

水平荷重による大梁は、下図のように変形します。荷重が作用するとせん断ひび割れが斜め方向に発生し、さらに荷重が作用するとひび割れが進展していきます。せん断力の向きは下図のようになる場合、ひび割れの向きは設問の向きで正しいです。

 

〔N o.15〕鉄筋コンクリート造の建築物の構造設計に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.地震時の変形に伴う建築物の損傷を軽減するために、靱性のみに期待せず強度を大きくした。

2.細長い平面形状の建築物としたので、地震時に床スラブに生じる応力が過大にならないように、張り間方向の耐力壁を外側のみに集中させず均等に配置した。

3.1階をピロティとしたので、地震時に1階に応力が集中しないように、1階の水平剛性を小さくした。

4.地震力に単独で抵抗できない屋外階段であったので、建築物本体と一体化し、建築物本体で屋外階段に作用する地震力に抵抗させた。

 

1.地震時の変形に伴う建築物の損傷を軽減するために、靱性のみに期待せず強度を大きくした。

<解説>

答は

地震時に建物の変形(塑性変形)が進むと、壁にヒビが入る、建具が開かなくなる、設備機器等の落下等、建築物への損傷も発生します。そのため、建物の強度を大きくすることで、変形を抑えられ、損傷を軽減することができます。

 

2.細長い平面形状の建築物としたので、地震時に床スラブに生じる応力が過大にならないように、張り間方向の耐力壁を外側のみに集中させず均等に配置した。

<解説>

答は

細長い平面形状の建築物で、張り間方向の耐力壁を外側のみに集中して計画すると、中央部分のスラブに生じる応力が大きくなってしまうことから、均等に耐震壁を配置する必要があります。

 

3.1階をピロティとしたので、地震時に1階に応力が集中しないように、1階の水平剛性を小さくした。

<解説>

答は×

1階がピロティとなる建物は、2階以上に耐震壁があり1階には耐震壁が少ない(または無い)計画となります。その場合、1階の水平剛性が他の階と比べて小さくなります。

水平剛性を他の階より小さくしてしまうと、水平剛性の小さい階で変形が集中してしまいます。変形が集中するということは、応力も集中してしまいます。よって、1階の水平剛性を高めることで、応力が集中しないようにすることができます。

 

4.地震力に単独で抵抗できない屋外階段であったので、建築物本体と一体化し、建築物本体で屋外階段に作用する地震力に抵抗させた。

<解説>

答は

建物のすぐ脇にあるような屋外階段で、地震力に単独で抵抗できない場合は、建築物本体と屋外階段を一体として計画することで、屋外階段に作用する地震力を、建築物本体の架構で抵抗させることができます。

その際に、屋外階段に作用する地震力が、建築物本体へ力が伝達できるように、接続部分の検討が必要となります。