〔N o.11〕鉄筋コンクリート部材のせん断耐力に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.柱梁接合部のせん断耐力は、一般に、取り付く大梁の梁幅を大きくすると大きくなる。
2.柱梁接合部のせん断耐力は、一般に、取り付く大梁の主筋量を増やすと大きくなる。
3.柱のせん断耐力は、一般に、柱に作用する軸方向圧縮力が大きいほど大きくなる。
4.柱のせん断耐力は、一般に、帯筋に降伏強度の高い高強度鉄筋を使用すると大きくなる。
1.柱梁接合部のせん断耐力は、一般に、取り付く大梁の梁幅を大きくすると大きくなる。
答は○
柱梁接合部のせん断耐力は、柱梁接合部の水平断面積(柱梁接合部を平面で見た時の断面積)とコンクリート強度によって定まります。
そのうち、柱梁接合部の水平断面積は、
柱梁接合部の水平断面積=接合部有効幅×柱せい
で求めることができます。そのうち、接合部有効幅は、大まかにいうと梁幅と柱幅の平均の幅のことです。つまり、梁幅が大きくなれば接合部有効幅も大きくなります。よって、梁幅を大きくすれば、柱梁接合部のせん断耐力を大きくすることができます。
2.柱梁接合部のせん断耐力は、一般に、取り付く大梁の主筋量を増やすと大きくなる。
答は×
設問1の解説より、柱梁接合部のせん断耐力は、取りつく大梁の主筋量を増やしても耐力は大きくなりません。
また、取りつく主筋の主筋量を増やすと、柱梁接合部のに作用する水平せん断力が大きくなります。
3.柱のせん断耐力は、一般に、柱に作用する軸方向圧縮力が大きいほど大きくなる。
答は○
柱のせん断耐力は、柱に作用する圧縮力が大きくなると圧縮力による拘束効果によりせん断耐力は大きくなります。(腕をまっすぐ伸ばしている時に横から叩かれるよりも、腕に力を入れた状態で叩かれる方が耐えられるイメージ)
ただし、圧縮力が大きいほど靭性は小さくなります。
4.柱のせん断耐力は、一般に、帯筋に降伏強度の高い高強度鉄筋を使用すると大きくなる。
答は○
柱のせん断耐力は、「コンクリート部分によるせん断耐力」と「帯筋によるせん断耐力」の組み合わせとなります。そのうち、帯筋による耐力は、帯筋の断面積と帯筋の降伏強度によって定まります。帯筋の降伏強度を高くすると、帯筋によるせん断耐力が大きくなります。
〔N o.12〕鉄筋コンクリート構造の配筋に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.大梁主筋の柱への必要定着長さは、大梁主筋の強度が高いほど短くなる。
2.大梁主筋の柱への必要定着長さは、柱のコンクリート強度が高いほど短くなる。
3.鉄筋のかぶり厚さの最小値は、主筋の応力伝達のためだけではなく、鉄筋コンクリート部材の耐久性・耐火性を考慮して定められている。
4.柱の帯筋の端部は、135度フックを設ける代わりに、必要溶接長さを満たせば帯筋相互を片面溶接とすることができる。
1.大梁主筋の柱への必要定着長さは、大梁主筋の強度が高いほど短くなる。
答は×
主筋の強度が高くなると、より大きな力を負担することができます。そのため、柱躯体への定着部分も大きな力を負担できるように定着長さを長くする必要があります。
2.大梁主筋の柱への必要定着長さは、柱のコンクリート強度が高いほど短くなる。
答は○
コンクリート強度が大きくなると、鉄筋を掴むコンクリートがより強い力で掴むことができます。そのため、短い定着長さで必要な定着部耐力を確保することができます。
3.鉄筋のかぶり厚さの最小値は、主筋の応力伝達のためだけではなく、鉄筋コンクリート部材の耐久性・耐火性を考慮して定められている。
答は○
鉄筋のかぶり厚さの最小値は、主筋の応力伝達や付着耐力を確保する為だけでなく、中性化等の鉄筋コンクリート部材の耐久性・耐火性を考慮して決められています。
かぶり厚さが不足すると、例えば中性化が鉄筋位置まで達してしまい、耐久性が低下してしまいます。
4.柱の帯筋の端部は、135度フックを設ける代わりに、必要溶接長さを満たせば帯筋相互を片面溶接とすることができる。
答は○
帯筋の端部は、135度フックを設けて帯筋が外れないようにします。
また、フック以外では、帯筋交互を必要溶接長さを片面溶接(フレア溶接)することで、帯筋が外れないようにする方法もあります。一般的に「溶接閉鎖型」帯筋と呼ばれています。
〔N o.13〕鉄筋コンクリート構造の構造計算に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.鉄筋コンクリートラーメン構造の応力計算において、柱及び梁を線材に置換し、柱梁接合部の剛域を考慮した。
2.柱の断面算定において、コンクリートに対する鉄筋のヤング係数比は、コンクリートの設計基準強度が大きくなるほど大きな値とした。
3.超高層建築物に異なる強度のコンクリートを使用するので、コンクリートの設計基準強度ごとに、異なる単位体積重量を用いて、建築物重量を計算した。
4.梁の許容曲げモーメントの算出において、コンクリートのほか、主筋も圧縮力を負担するものとした。
1.鉄筋コンクリートラーメン構造の応力計算において、柱及び梁を線材に置換し、柱梁接合部の剛域を考慮した。
答は○
柱や梁部材を線材として置換します。その時、柱梁接合部など部分は、変形しない部分として仮定します。柱梁接合部内にある線材部分を「剛域」として考えることが一般的です。
2.柱の断面算定において、コンクリートに対する鉄筋のヤング係数比nは、コンクリートの設計基準強度が大きくなるほど大きな値とした。
答は×
コンクリートに対する鉄筋のヤング係数比nは、
ヤング係数比n=鉄筋のヤング係数/コンクリートのヤング係数
のことです。
鉄筋のヤング係数は強度に関わらず一定ですが、コンクリートのヤング係数は設計基準強度が大きくなると大きくなります。
3.超高層建築物に異なる強度のコンクリートを使用するので、コンクリートの設計基準強度ごとに、異なる単位体積重量を用いて、建築物重量を計算した。
答は○
コンクリートの単位体積重量は、設計基準強度が高くなると重くなります。これは、コンクリート強度が高くなると、セメント量が多くなり、密実なコンクリートとなるためです。
コンクリート強度 単位体積重量
Fc≦36N/mm2 23kN/mm3
36N/mm2<Fc≦48N/mm2 23.5kN/mm3
48N/mm2<Fc 24kN/mm3
4.梁の許容曲げモーメントの算出において、コンクリートのほか、主筋も圧縮力を負担するものとした。
答は○
梁の許容曲げモーメントは、引張側と圧縮側のどちらかが耐力を迎えた時のことです。
曲げモーメントに対して、引張側は主筋が負担し、圧縮側はコンクリート+主筋が負担します。つまり、圧縮側は鉄筋も圧縮力を負担するものとして曲げ耐力の算定が行われます。
(このとき、引張鉄筋比が釣合鉄筋比以下であれば、引張側の主筋が先に降伏耐力を迎えます。)
〔N o.14〕鉄筋コンクリート構造の保有水平耐力計算に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.全体崩壊形の崩壊機構となったので、崩壊機構形成時の応力を用いて、部材種別及び構造特性係数Ds値の判定を行った。
2.保有水平耐力を増分解析により計算する際に、各階に作用する外力分布を、地震層せん断力係数の建築物の高さ方向の分布を表す係数Aiに基づいて設定した。
3.大梁の曲げ終局強度を計算する際に、スラブ筋による強度の上昇を考慮した。
4.主筋が円周方向に均等に配筋されている円形断面柱の曲げ終局強度を略算で求める際に、等断面積の正方形柱に置換し、主筋のかぶり厚さを変えることなく全主筋本数の1/2がそれぞれ、引張側と圧縮側に1列に配置されているものと仮定して算出した。
1.全体崩壊形の崩壊機構となったので、崩壊機構形成時の応力を用いて、部材種別及び構造特性係数Ds値の判定を行った。
答は○
保有水平耐力計算では、大地震時に対する検討を行います。その際の確認事項として、
①建物の保有水平耐力を確認する
②建物の崩壊系を確認する
の2つがあります。
設問の内容は、上記のうち②の確認を行っています。
②建物の崩壊系を確認する目的は、構造特性係数Dsを求めることです。構造特性係数Dsは、建物の崩壊系に応じて(=建物がどのようにして壊れるか)定まります。せん断破壊のような脆性破壊となる場合は、エネルギー吸収能力(靭性能力)が小さいため構造特性係数は大きくなり、曲げ破壊型のようなエネルギー吸収能力(靭性能力)が大きい場合は、構造特性係数Dsは小さくなります。
2.保有水平耐力を増分解析により計算する際に、各階に作用する外力分布を、地震層せん断力係数の建築物の高さ方向の分布を表す係数Aiに基づいて設定した。
答は○
保有水平耐力を計算する上での外力分布(地震力が作用する大きさの分布)は、一次設計(許容応力度計算)と同じ建築物の高さ方向の分布を表す係数Aiに基づいて設定することが一般的です。
3.大梁の曲げ終局強度を計算する際に、スラブ筋による強度の上昇を考慮した。
答は○
大梁にスラブが取りついている場合、大梁周囲のスラブ筋も梁の耐力に考慮して大梁の曲げ終局強度を算定します。
4.主筋が円周方向に均等に配筋されている円形断面柱の曲げ終局強度を略算で求める際に、等断面積の正方形柱に置換し、主筋のかぶり厚さを変えることなく全主筋本数の1/2がそれぞれ、引張側と圧縮側に1列に配置されているものと仮定して算出した。
答は✕
例えば、主筋本数8本の円柱の場合、全主筋本数の1/2がそれぞれ、引張側と圧縮側に1列に配置されているものと仮定すると、
X方向主筋本数→4本
Y方向主筋本数→4本
となります。この場合、柱の全主筋本数は12本となってしまい、円柱のときよりも主筋本数が多くなってしまいます。その為、この仮定は間違いとなります。