建物には、様々な架構形式が用いられていますが、一般的にラーメン構造とトラス構造が多く用いられています。構造力学を学ぶ上でもこの2種類の架構形式は基本となる架構形式です。といっても、力学の基本は先ほど説明した「力の釣り合い」なので、今まで学んだ内容を意識しながら学んでいきましょう。
実際の建物では、柱や梁などの各部材は断面(厚さ)を持っていますが、この断面がある状態で力学計算を解くのはとても難しいので、工学的観点より矛盾のない単純な形へ置き換えます。これを「モデル化」といいます。次の項目でも説明しますが、例えば、柱や梁の部材は、材軸位置に断面が集まっているものとして考え、線材に置き換えます。
支点とは、部材を支持している点のことであり、部材に荷重が作用すると「作用・反作用の法則」より、支点では反力が発生します。
支点の種類は、表1-1-1に示す3種類があり、それぞれピン支点、ローラー支点、固定支点と呼ばれます。
ピン支点は、水平方向にも鉛直方向にも移動しない支点ですが、回転に対しては拘束力が無く自由に回転することができます。
ローラー支点は、回転及び水平方向に自由に移動することができる支点で鉛直方向のみ移動しない支点となります。
固定支点(固定端)は、水平方向にも鉛直方向にも移動せず、さらに回転もしない支点です。
また、各支点に生じる反力については、「移動しない方向に反力が生じる」と考えてみると分かると思います。荷重が作用しても移動しないということは、移動しないように荷重に対応した反力が発生しています。
ピン支点では、水平方向と鉛直方向に移動しない支点ですので、反力としては「水平反力」と「鉛直反力」の2つとなります。
ローラー支点では、鉛直方向のみ移動しない支点ですので、反力としては「鉛直反力」のみとなります。
固定支点(固定端)では、水平方向、鉛直方向、回転のいずれに対しても移動しない支点ですので、反力としては「水平反力」と「鉛直反力」、「モーメント反力」の3つとなります。
部材と部材を接合している接合部についてもモデル化が行われます。接合部の接合方法の種類としては大きく分けて表1-1-2に示す剛接合とピン接合の2種類となります。
剛接合は、名前の通り部材と部材を一体となるように接合し、部材が力を受けても変形をしない接合方法です。
ピン接合は、ピン支点と同じように自由に回転ができる接合方法です。モデル上では、ピン接合箇所を○印で表されます。
実際の構造物の接合部ではどのようにモデル化されるかというと、図1-1-6に示すようにラーメン構造の接合部は剛接合(剛節点)として考えられます。剛接合では、回転に対して拘束されるので、部材の各位置により回転のなす角度が変化します。
一方、鉄骨造で用いられるトラス構造では、トラス部材同士の接合部はピン接合として部材同士を繋いでいます。ただし、実際にピン接合とするのはコスト面などで難しい場合があるので、図1-1-7に示すようにガセットプレートを介して高力ボルト接合による接合とされています。