構造の文章問題を解いていると必ず躓くと思います。
一級建築士 学科 構造の文章問題、とにかく設問の文章が分かりにくいという話が多いです。ここでは、文章問題を解く上でのポイントについて解説していきます。
なぜ設問が難しく感じるのか
まず、なぜ設問が難しく感じるのかというと、大きく2つ原因があります。
① 計算式を文章にしている為、長文となってしまっている
②過去問の言い回しを変えているため、分かりにくい文章となっている
それぞれ解説していきます。
計算式を文章にしている為、長文となってしまっている
このパターンは、鉄筋コンクリート造や鉄骨造によく見られます。
よくあるのが、「Aに対するBの比」(=B/A)のような表現方法です。
例えば、2017年度に出題された、
「曲げ降伏する梁の靱性を高めるために、コンクリートの設計基準強度に対するせん断応力度の比を大きくした。」(2017年度 学科 構造 No.12 設問2)
の設問があります。
設問内の「コンクリートの設計基準強度に対するせん断応力度の比」を式として表すと、
「τ/Fc」
だけで表すことができます。とても簡単ですよね(笑)
(τ:せん断応力度、Fc:コンクリートの設計基準強度)
このように、数式を文章にすると長文になってしまうので、難しく感じてしまう要因の一つであると思います。
問題を解く上でポイントとしては、自分なりに分かりやすく文章を書きなおすひつようがあります。
例えば、「せん断応力度」は、単位面積当たりのせん断力のことなので、すなわち応力度(=せん断力)と分類することができます。一方、「コンクリートの設計基準強度」は、コンクリート強度(=耐力 ※せん断耐力)のことを表していることが分かります。
すなわち、
せん断力/せん断耐力
の比較をしていることが分かります。
次に、文章を読んでいくと、
「コンクリートの設計基準強度に対するせん断応力度の比を大きくした。」
と書いてあります。言い換えてみると
「せん断力/せん断耐力の比を大きくした。」
となります。
せん断力/せん断耐力の比が大きくなるということは、分子であるせん断力が大きくなるということになります。せん断力が大きくなるとよりせん断耐力に近づくことになります。
設問の最初に、「曲げ降伏する梁の靱性を高めるために」とあります。鉄筋コンクリート部材は、基本的に靭性に富んだ曲げ破壊をとなるようにしますが、曲げ破壊後にせん断破壊を起こさないように、せん断力に対しては余力のある状態の方がGOODです。
そのため、設問だと、脆性破壊であるせん断破壊となるまでの余力が小さくなり、危険な状態となるということが判断できると思います。(答えは×)
過去問の言い回しを変えているため、分かりにくい文章となっている
設問が難しく感じるもう一つのパターンとして、過去問の言い回しを変えて出題されていることがよくあります。
先ほどの設問についても、翌年の2018年度にも似たような設問が出ています。
「梁の塑性変形能力を確保するため、崩壊形に達したときの梁の断面に生じる平均せん断応力度を小さくした。」(2018年度 学科 構造 No.14 設問3)
一見、関係ないんじゃないのって思うかもしれませんが、、、解説していきます。
冒頭の文章を比較すると、
「梁の塑性変形能力を確保するため」(2018年度)
「曲げ降伏する梁の靱性を高めるために」(2017年度)
ともに「梁の靭性能力を高めるために」の意味であることが分かります。
次に、後半部分の文章を比較すると、
「崩壊形に達したときの梁の断面に生じる平均せん断応力度を小さくした」(2018年度)
「コンクリートの設計基準強度に対するせん断応力度の比を大きくした」(2017年度)
2018年度の文章は、「崩壊形に達した時(=建物の保有水平耐力に達した時)に梁に作用するせん断力」となります。もう少しわかりやすく言うと、「これ以上建物が力を負担できない状態の時の梁に作用するせん断力」のことです。
このせん断力を小さくしたということは、せん断耐力に対してより余力が大きくなるということなので、より安全な状態であると判断できます。(設問は〇)
一方、2017年度の文章も同様に、「コンクリートの設計基準強度に対するせん断応力度の比を大きくした=せん断力/せん断耐力の比を大きくした=せん断力を大きくした」の意味となります。
よって、どちらの年度の設問も、せん断力を小さくした(大きくした)ことに対する設問であることが分かります。
このように、過去問の言い回しを変えて出題されることはよくあります。
試験まで残り1ヶ月ちょっとですが、ここでの内容を意識するだけで数点は変わってくると思います!!