〔N o.16〕鉄骨構造に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.鉄筋コンクリートスラブとこれを支持するH形鋼をシアコネクターで接合することで梁と床スラブが一体となって曲げに抵抗する合成梁には、完全合成梁と不完全合成梁がある。
2.鉄骨梁のせいがスパンの1/15以下の場合、建築物の使用上の支障が起こらないことを確かめるためには、固定荷重及び積載荷重によるたわみの最大値が所定の数値以下であることを確認すればよい。
3.弱軸まわりに曲げを受けるH形鋼の許容曲げ応力度は、幅厚比の制限に従う場合、許容引張応力度と同じ値とすることができる。
4.ラーメン構造において、靱性を高めるために、塑性化が予想される柱又は梁については、幅厚比の大きい部材を用いる。
1.鉄筋コンクリートスラブとこれを支持するH形鋼をシアコネクターで接合することで梁と床スラブが一体となって曲げに抵抗する合成梁には、完全合成梁と不完全合成梁がある。
答は○
鉄筋コンクリートスラブとこれを支持するH形鋼をシアコネクター(スタッド)で接合することで、梁と床スラブが一体となって曲げに抵抗することができます。梁と床スラブが一体とみたH形鋼梁のことを合成梁と呼びます。
合成梁の種類として、完全合成梁と不完全合成梁があります。
完全合成梁は、梁と床スラブが完全に一体となって曲げに抵抗できると見なせる分のシアコネクター(スタッド)本数が取り付けられている合成梁のことです。
一方、不完全合成梁は、完全合成梁に必要なシアコネクター(スタッド)本数には満たないが、必要本数の半分以上を有している合成梁のことです。
2.鉄骨梁のせいがスパンの1/15以下の場合、建築物の使用上の支障が起こらないことを確かめるためには、固定荷重及び積載荷重によるたわみの最大値が所定の数値以下であることを確認すればよい。
答は○
鉄骨梁のせいが、スパンの1/15以下(スパンに対して梁せいが小さい)場合、固定荷重及び積載荷重によるたわみの最大値が所定の数値以下であることを確認する必要があります。
たわみが大きくなると、床がたわんだり、人の歩行等による振動を感じやすくなったりと、使用上の支障が発生してしまいます。これを防止するために、たわみに対して制限をかけています。
3.弱軸まわりに曲げを受けるH形鋼の許容曲げ応力度は、幅厚比の制限に従う場合、許容引張応力度と同じ値とすることができる。
答は○
弱軸まわりに曲げを受けるH形鋼は、幅厚比の制限に従う場合、局部座屈の恐れが無い為、許容曲げ応力度=許容引張応力度とすることができます。
横座屈による許容曲げ応力度の低減は、弱軸まわりに曲げを受ける場合は、考える必要はありません。強軸方向に曲げを受けたときに横(弱軸)方向にはらみ出す現象なので、あらかじめ弱軸まわりに曲げを受けていれば、横座屈の現象は起きないからです。
4.ラーメン構造において、靱性を高めるために、塑性化が予想される柱又は梁については、幅厚比の大きい部材を用いる。
答は×
幅厚比は=幅/厚の比であり、小さいほど局部座屈も起きにくくなり、塑性変形能力が高い(=靭性が高い)です。局部座屈は、脆性的な破壊である為、靭性を高めるには逆効果となります。
〔N o.17〕鉄骨構造の接合部に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.クレーン走行桁など振動・衝撃又は繰返し応力を受ける部材の接合部には、高力ボルト以外のボルトを使用してはならない。
2.高力ボルトの最小縁端距離は、所定の構造計算を行わない場合、手動ガス切断縁の場合より自動ガス切断縁の場合のほうが小さい値である。
3.高力ボルト摩擦接合の一面せん断の長期許容せん断応力度は、高力ボルトの基準張力To(単位N/mm2)の0.3倍である。
4.山形鋼を用いた筋かい材を材軸方向に配置された一列の高力ボルトによりガセットプレートに接合する場合、筋かい材の有効断面積は、高力ボルトの本数が多いほど小さくなる。
1.クレーン走行桁など振動・衝撃又は繰返し応力を受ける部材の接合部には、高力ボルト以外のボルトを使用してはならない。
答は○
振動・衝撃又は繰返し応力を受ける部材の接合部には、高力ボルト以外のボルトを使用してはいけないです。これは、繰り返し応力を受けることで、中ボルト等の場合、ボルト部分が緩んでしまう為です。
2.高力ボルトの最小縁端距離は、所定の構造計算を行わない場合、手動ガス切断縁の場合より自動ガス切断縁の場合のほうが小さい値である。
答は○
高力ボルトのボルト孔をあけるときの方法において、手動ガス切断縁の場合より自動ガス切断縁の場合の方が、施工精度が良いことから、最小縁端距離は小さい値とすることができます。
3.高力ボルト摩擦接合の一面せん断の長期許容せん断応力度は、高力ボルトの基準張力To(単位N/mm2)の0.3倍である。
答は○
高力ボルト摩擦接合の一面せん断の長期許容せん断応力度は、高力ボルトの基準張力To(単位N/mm2)の0.3倍です。また、短期許容せん断応力度は、高力ボルトの基準張力To(単位N/mm2)の0.3×1.5=0.45倍です。
4.山形鋼を用いた筋かい材を材軸方向に配置された一列の高力ボルトによりガセットプレートに接合する場合、筋かい材の有効断面積は、高力ボルトの本数が多いほど小さくなる。
答は×
山形鋼を筋かい材として用いた場合、応力方向の一列のボルト本数が多いほど、無効断面が小さくなることから、筋かい材の有効断面積は大きくなります。
〔N o.18〕通しダイアフラム形式の角形鋼管柱とH形鋼梁の柱梁仕口部に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.突合せ継手において、梁フランジは、一般に、通しダイアフラムを構成する鋼板の厚みの内部で溶接しなければならない。
2.梁の最大耐力は、梁のフランジ、ウェブとも完全溶込み溶接とした場合においても、鋼管フランジの面外変形の影響やスカラップによる断面欠損等を考慮して算定する。
3.梁ウェブに設けるスカラップの底には、地震時にひずみが集中しやすいので、スカラップを設けないか、ひずみを緩和するスカラップの形状とする必要がある。
4.柱梁接合部における鋼製エンドタブの組立溶接は、直接母材に行うことが望ましい。
1.突合せ継手において、梁フランジは、一般に、通しダイアフラムを構成する鋼板の厚みの内部で溶接しなければならない。
答は○
設問の内容が、どういう図になるのかをイメージできるかが大事です。
下図をイメージできればOKです。
溶接部が通しダイアフラムの外部に出てしまうと、溶接がダイアフラムの上部についてしまいます。溶接というのは、高い熱を与えるので、鋼材の性質を変化させてしまいます。そのため、溶接部が通しダイアフラムの外部に出ないようにする必要があるのです。
<+αの知識>
通しダイアフラムと大梁フランジの関係:通しダイアフラム(及び溶接部)が、大梁のフランジに作用する力を伝えられるようにするため、通しダイアフラム厚>大梁フランジ厚となります。また、溶接をする際の通しダイアフラムと大梁のずれ(食い違い)による施工誤差を考慮して、通しダイアフラムの方を厚くといった理由もあります。
2.梁の最大耐力は、梁のフランジ、ウェブとも完全溶込み溶接とした場合においても、鋼管フランジの面外変形の影響やスカラップによる断面欠損等を考慮して算定する。
答は○
梁のフランジ、ウェブとも完全溶込み溶接とした場合であっても、梁の最大耐力を迎える前に、取り付く柱の鋼管フランジが面外変形を起こしてしまう場合は、それを考慮して最大耐力を評価する必要があります。
また、スカラップによる断面欠損等がある場合は、欠損分の耐力低減をする必要があります。
3.梁ウェブに設けるスカラップの底には、地震時にひずみが集中しやすいので、スカラップを設けないか、ひずみを緩和するスカラップの形状とする必要がある。
答は○
従来、柱梁接合部のH形断面梁端部フランジの溶接接合では、 フランジの溶接部とウェブの溶接部が交差してしまうことから、溶接施工上、スカラップを設けていました。
ただし、スカラップによる断面欠損やスカラップ部への応力集中による破断の被害が出たため、近年はスカラップを設けない「ノンスカラップ工法」やひずみを緩和する「改良型スカラップ工法」とすることが一般的です。
4.柱梁接合部における鋼製エンドタブの組立溶接は、直接母材に行うことが望ましい。
答は×
鋼製エンドタブの組立溶接を直接母材に行ってしまうと、母材へ悪影響を及ぼしてしまうことから、母材への組立溶接はNGです。裏当て金へ溶接する必要があります。
〔N o.19〕鉄骨構造の設計に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.梁の弱軸まわりの細長比が200で、梁の全長にわたって均等間隔で横補剛を設ける場合、梁の鋼種がSN400BよりSN490Bのほうが横補剛の必要箇所は少なくなる。
2.引張力を負担する筋かいを保有耐力接合とするためには、筋かいの軸部の降伏耐力より、筋かい端部及び接合部の破断耐力を大きくする必要がある。
3.隅肉溶接部の有効面積は、「溶接の有効長さ」×「有効のど厚」により求める。
4.圧縮力と曲げモーメントを同時に受ける柱の断面は、「平均圧縮応力度σcを許容圧縮応力度fcで除した値」と「圧縮側曲げ応力度cσbを許容曲げ応力fbで除した値」との和が1以下であることを確かめる必要がある。
1.梁の弱軸まわりの細長比が200で、梁の全長にわたって均等間隔で横補剛を設ける場合、梁の鋼種がSN400BよりSN490Bのほうが横補剛の必要箇所は少なくなる。
答は×
横補剛材とは、上記で説明した横座屈により横にはらみ出すのを抑える部材のことです。主に大梁に取りつく小梁を横補剛材として兼ねることが多いです。
梁の材料強度をSN400BからSN490Bに変更すると、曲げ耐力がUPします(=より大きな力を負担できる)。すなわち、より大きな力が作用することから、フル耐力を発揮する前に横座屈を起こしてしまいます。そのため、横座屈を抑えるのに必要な横補剛材を増やす必要があります。
2.引張力を負担する筋かいを保有耐力接合とするためには、筋かいの軸部の降伏耐力より、筋かい端部及び接合部の破断耐力を大きくする必要がある。
答は○
引張力を負担する筋かい材は、降伏耐力に達した後でも伸び能力がある(=靱性がある)ことから、破断するまではある程度力を負担し続けることができます。
一方、筋かい端部及び接合部の破断耐力は、その箇所が壊れる時点での力なので、壊れたら力を負担できなくなります。そのため、接合部の破断耐力は筋かい軸部(「=筋かい」と思ってOK)の降伏耐力よりも大きくする必要があります。
3.隅肉溶接部の有効面積は、「溶接の有効長さ」×「有効のど厚」により求める。
答は○
隅肉溶接部有効面積は、「溶接の有効長さ」×「有効のど厚」により求めます。また、この有効面積に許容応力度を掛けることで、溶接部の耐力を求めることができます。
4.圧縮力と曲げモーメントを同時に受ける柱の断面は、「平均圧縮応力度σcを許容圧縮応力度fcで除した値」と「圧縮側曲げ応力度cσbを許容曲げ応力fbで除した値」との和が1以下であることを確かめる必要がある。
答は○
紛らわしい文章ですが、嚙み砕いてみると…
圧縮力と曲げモーメントを同時に受ける柱の断面は、圧縮力と曲げモーメントの両方の応力が作用しています。そのため、圧縮力と曲げモーメントの組み合わせた応力に対して、柱断面が安全かどうかを確かめる必要があります。
その方法として、
・「平均圧縮応力度σcを許容圧縮応力度fcで除した値(=圧縮力に対する検定比)」⇒圧縮力に対する安全性の検討。
・「圧縮側曲げ応力度cσbを許容曲げ応力fbで除した値(=曲げモーメントに対する検定比)」⇒曲げモーメントに対する安全性の検討
を行うと共に、この両者の検定比(=応力度/許容応力度)の和が1以下であることを確かめれば、柱断面が安全であることが確認できます。