~構造設計者こーじの構造解説blog~

一級建築士の構造解説・過去問解説を行っています。某組織設計事務所9年→構造設計事務所。10年目。

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2-2 長期荷重 ~固定荷重と積載荷重~

 荷重の種類のうち、ここでは「長期荷重」について解説していきます。固定荷重と積載荷重がありますが、特に、積載荷重の3つの数値(床・小梁用、架構用、地震用)の違いを理解することが大事なポイントとなります。

 

2-2-1 長期荷重について

 2-1-2でも解説しましたが、長期荷重は、長期間(常時)作用する荷重であり、固定荷重積載荷重があります。

 

2-1 荷重の種類 - ~構造設計者こーじの構造解説blog~

 

2-2-2 固定荷重

 固定荷重とは、建物自体の重さ(自重)や床・天井仕上げ・間仕切り壁等の仕上げ材による荷重です。具体的には、下記の種類が固定荷重として考えられます。

・屋根・床スラブ、壁、柱、梁等の構造体の重量(自重)

・フローリングやカーペット、天井材などの仕上げ材による重量

・照明、天井カセットなどの設備機器(天井や上階スラブに固定する機器)重量

・天井内の設備配管、電気配線重量

 

また、構造計算書での仮定荷重表では、「D.L.(Dead Load)」と表記することが多いです。

 

2-2-3 積載荷重

 積載荷重とは、人間や机・椅子などの什器・設備機器等の物品による荷重です。具体的には、下記の種類が積載荷重として考えられます。

・人間

・机、椅子、棚などの家具・什器

・機械室・電気室や屋上に設置する設備機器、キュービクル

・(駐車場等における)自動車等の車両

 

 また、構造計算書での仮定荷重表では、「L.L.(Live Load)」と表記することが多いです。

 

 積載荷重は、部屋用途によって荷重が変わる(什器や機器の重量が異なる)ため、室用途によって荷重の数値が異なります。この積載荷重の設定は、設計者が適宜設定する必要がありますが、建築基準法施行令第85条に一般的な居室の積載荷重が定められています。表2-1-1に積載荷重一覧を示します。

 

表 2-1-1 積載荷重一覧(建築基準法施行令第85条)

室の種類

床・小梁用

架構用

地震用

(一)

住宅の居室、住宅以外の建築物における寝室又は病室

1800

1300

600

(二)

事務室

2900

1800

800

(三)

教室

2300

2100

1100

(四)

百貨店又は店舗の売場

2900

2400

1300

(五)

劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂、集会場その他これらに類する用途に供する建築物の客席又は集会室

固定席の場合

2900

2600

1300

その他の場合

3500

3200

1600

(六)

自動車車庫及び自動車通路

5400

3900

2000

(七)

廊下、玄関又は階段

(三)~(五)の室の場合は(五)の数値による

(八)

屋上広場又はバルコニー

一般用途

1800

1300

600

学校又は百貨店

2900

2400

1300

※数値の単位はN/㎡

 

 この表を見てみると、各居室の「床・小梁用」、「架構用」、「地震用」の3種類の積載荷重の数値があることが分かります。これから、各数値の意味について解説していきます。

 

2-2-4 積載荷重の3種類の数値について

 積載荷重に対して「床・小梁用」「架構用」「地震用」と3つの数値が設定されていますが、その力の大小関係は必ず、

「床・小梁用」>「架構用」>「地震用」

となります。

 なぜ、そうなるのかを表2-1-1の(一)居室の場合で考えていきます。

 

①「床・小梁用」積載荷重

 居室における「床・小梁用」積載荷重は、1800N/㎡です。これは、1㎡当たり1800Nの荷重を床に載せることができるという意味です。1800Nとは、60kgの人が3人いる想定となり、10畳の部屋では約50人分の荷重があるとしています。これだけ考えてみると、荷重を大きく想定しすぎているんじゃないのって思う方もいると思います。これは、本を入れたダンボールを積み上げる、ピアノを置くといった、荷重を集中的に配置した場合を考慮しているためです。

 小梁に均等に荷重が作用した場合(等分布荷重)と集中的に荷重(集中荷重)が作用した場合を考えてみます。図2-2-1を見てみると、等分布荷重よりも集中荷重とした場合の方が曲げモーメントが2倍となり大きくなることが分かります。(同じ重量の場合、集中荷重の方が曲げモーメントが大きくなることをイメージできれば大丈夫です。) このように、床・小梁用積載荷重は、荷重の偏在や集中を考慮して設定されています。

 

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図2-2-1 等分布荷重と集中荷重の応力の違い

 

②架構用積載荷重

架構用積載荷重は、主に大梁や柱など主架構の検討の際に用いられる積載荷重です。人や家具が載る床は小梁を介して大梁、柱へ荷重が伝達されます。大梁や柱の各部材は、複数の床や小梁を支持しています。ある床に集中的に積載荷重が作用していても他の床ではそれほど荷重が作用していない場合では、その大梁や柱が支持している床の積載荷重は均されることから、床・小梁用積載荷重よりは小さい値(居室では1300N/㎡)となります。

 

③地震用積載荷重

 地震用積載荷重とは、地震力を求める際の積載荷重となります。2-5でも解説しますが、地震力は建物の重量(固定荷重+地震用積載荷重)にCi(地震層せん断力係数)を掛けた値となります。地震力を求める際の積載荷重は、荷重の偏在や集中を考慮する必要は無く、単純に人や家具などの重量の合計を求めれば良いので、架構用積載荷重よりもさらに小さい値(居室では600N/㎡)となります。