~構造設計者こーじの構造解説blog~

一級建築士の構造解説・過去問解説を行っています。某組織設計事務所9年→構造設計事務所。10年目。

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2-1 荷重の種類

ここでは、荷重ってどのような種類があるのか、それぞれの荷重がどのように決められているのかを解説していきます。まずは、構造設計において主に想定する荷重の種類について紹介していきます。
 
 
 2-1-1 荷重とは?
 

 建築構造を勉強する上でよく使われる言葉である「荷重」ですが、ここでもう一度意味について考えてみます。
 一言でいうと、「荷重=力」です。例えば、木の枝を折ろうとするとき、一般的には「木の枝に力をかけている」と表現しますが、建築構造で表現する場合は「木の枝に荷重をかけている」となります。

 普段、生活する上では「力」で大丈夫ですが、力学や建築構造では部材が外部から受ける力のことを「荷重」と呼んでいます。

  

 
 2-1-2 長期荷重と短期荷重
 

「荷重」と一言で表現しても、多くの種類があります。まず大きい分類で分けると「長期荷重」と「短期荷重」 の2種類となります。それぞれの荷重を説明すると、

 

長期荷重:長期間(常時)作用する荷重(固定荷重、積載荷重 等)

→建物自体の重さ・床・天井仕上げ・間仕切り壁による荷重(固定荷重)や人間や机・椅子などの什器・設備機器等による荷重(積載荷重)

 

短期荷重:短期間(一時的に)作用する荷重(風荷重、地震荷重 等)

→地震による力、風、雪 等普段は発生せず一時的に作用する荷重

 

となります。短期荷重(特に地震荷重)に対して建物が壊れないように設計すると思われがちですが、長期荷重・短期荷重の各荷重に対して十分配慮して設計を行っていきます。例えば、長期荷重ではクリープ変形やひび割れにも注意して設計しています。

 

 
 2-1-3 荷重の種類
 
 建築基準法の中で想定されている荷重としては、固定荷重、積載荷重、風荷重、積雪荷重、地震荷重があります。そのうち、固定荷重や積載荷重、多雪地域における積雪荷重(0.7S)は、長期間(常時)荷重が作用している為、長期荷重に分類されます。また、風荷重や積雪荷重、地震荷重は、短期間(一時的)に荷重が作用する為、短期荷重に分類されます。
 
 また、短期荷重については、長期荷重と組み合わせによる荷重として考えます。例えば、地震荷重においては、地震による力が建物に作用した(地震が発生した)その瞬間でも、長期荷重は作用した状態ですので、長期荷重+地震荷重=短期荷重となります。
 
 「長期」と「短期」の考え方は、許容応力度設計とも関係してくる内容ですのでとても大事な内容です。構造設計では、荷重により部材に発生する応力に対して、部材の許容耐力(=部材が耐えうる力)が上回っていることを確認します(これを「断面算定」といいます)。その際に、長期荷重に対する部材の許容耐力(長期許容耐力)と、短期荷重に対する部材の許容耐力(短期許容耐力)とで部材の許容耐力の数値が異なります。基本的には、長期荷重<短期荷重なので、長期許容耐力<短期許容耐力の大小関係となり、各構造材料や各部材毎に規定されています。
次項より、各荷重について解説していきますが、各荷重の概要について下記に示していきます。
 
<固定荷重>

建物自体の重さや床・天井仕上げ・間仕切り壁等の仕上げ材による荷重。


<積載荷重>

人間や机・椅子などの什器・設備機器等の物品による荷重。


<風荷重>

風による荷重。構造骨組用の風荷重と屋根吹き材等の風荷重の2種類の風荷重がある。


<積雪荷重>

積雪による荷重。一般地域と特定行政庁により指定された多雪地域に分類される。近年の積雪による屋根崩落等の被害があったことから、平成30年の告示改正により積雪荷重の割増しの場合あり。

 

<地震荷重>

地震による荷重。建築基準法では、中地震(稀に発生する地震)及び大地震(極めて稀に発生する地震)に対して、建物の設計を行う。