~構造設計者こーじの構造解説blog~

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一級建築士試験 構造Ⅳ【平成26年(2014年)No.15~No.18】【鉄骨造】

 

〔N o.15〕鉄骨構造の筋かいに関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.引張力を負担する筋かいにおいて、接合部の破断強度は、軸部の降伏強度に比べて十分に大きくなるように設計する。

2.山形鋼を用いた引張力を負担する筋かいの接合部に高力ボルトを使用する場合、山形鋼の全断面を有効として設計する。

3.圧縮力を負担する筋かいの耐力は、座屈耐力を考慮して設計する。

4.筋かいが柱に偏心して取り付く場合、偏心によって生じる応力の影響を考慮して柱を設計する。

 

1.引張力を負担する筋かいにおいて、接合部の破断強度は、軸部の降伏強度に比べて十分に大きくなるように設計する。

<解説>

答は

筋かいの接合部については、保有耐力接合とする必要があります。そのため、接合部が破断するより先に軸部を降伏させる必要があります。

 

2.山形鋼を用いた引張力を負担する筋かいの接合部に高力ボルトを使用する場合、山形鋼の全断面を有効として設計する。

<解説>

答は×

山形鋼や溝形鋼のような非対称の断面において引張力を負担させる場合、断面の先端部分は無効部分として、断面積から除きます。よって、全断面は有効とすることはできません。

 

3.圧縮力を負担する筋かいの耐力は、座屈耐力を考慮して設計する。

<解説>

答は

圧縮力を負担する筋交いについては、座屈について考慮する必要があります。座屈耐力は、柱の座屈耐力と同じように求めることができます。

 

4.筋かいが柱に偏心して取り付く場合、偏心によって生じる応力の影響を考慮して柱を設計する。

<解説>

答は

筋交いが柱に偏心して取りつく場合、柱に偏心による応力(偏心曲げモーメントなど)が発生します。そのため、偏心による応力を考慮して柱の断面算定を行う必要があります。

 


 

〔N o.16〕鉄骨構造の接合部に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.F10Tの高力ボルト摩擦接合において、2面摩擦接合2本締めの許容せん断耐力を、同一径の1面摩擦接合4本締めの場合と同じ値とした。

2.柱梁接合部のH形断面梁端部フランジの溶接接合において、変形性能の向上を期待して、梁のウェブにスカラップを設けないノンスカラップ工法を用いた。

3.箱形断面の柱にH形鋼の梁を剛接合するために、梁のフランジは突合せ溶接とし、ウェブは隅肉溶接とした。

4.隅肉溶接継目の のど断面に対する短期許容応力度は、接合される鋼材の溶接部の基準強度Fに等しい値とした。

 

1.F10Tの高力ボルト摩擦接合において、2面摩擦接合2本締めの許容せん断耐力を、同一径の1面摩擦接合4本締めの場合と同じ値とした。

<解説>

答は

高力ボルト摩擦接合において、同一径であれば、2面摩擦接合によるせん断耐力は、1面接合によるせん断耐力の2倍となります。よって、2面摩擦接合2本締めの許容せん断耐力=1面摩擦接合4本締めとなります。

 

2.柱梁接合部のH形断面梁端部フランジの溶接接合において、変形性能の向上を期待して、梁のウェブにスカラップを設けないノンスカラップ工法を用いた。

<解説>

答は

従来、柱梁接合部のH形断面梁端部フランジの溶接接合では、 フランジの溶接部とウェブの溶接部が交差してしまうことから、溶接施工上、スカラップを設けていました。

ただし、スカラップによる断面欠損やスカラップ部への応力集中による破断の被害が出たため、近年はスカラップを設けない「ノンスカラップ工法」や「改良型スカラップ工法」とすることが一般的です。

 

3.箱形断面の柱にH形鋼の梁を剛接合するために、梁のフランジは突合せ溶接とし、ウェブは隅肉溶接とした。

<解説>

答は

フランジは、曲げモーメントによる引張力(圧縮力)を負担し、ウェブはせん断力を負担します。

そのため、

引張力が作用するフランジの溶接部⇒引張力が伝達できる「突合せ溶接」

せん断力が作用するウェブの溶接部⇒せん断力が伝達できる「隅肉溶接」

と負担する応力に合わせて溶接方法が異なります。

 

4.隅肉溶接継目の のど断面に対する短期許容応力度は、接合される鋼材の溶接部の基準強度Fに等しい値とした。

<解説>

答は×

隅肉溶接は、せん断力を負担します。その場合、隅肉溶接の短期許容応力度は、全てF/√3となり、Fとすることはできないです。

※仮に隅肉溶接に曲げモーメントを負担させる場合でも、隅肉溶接部の許容引張応力度はF/√3となります。

 


 

〔N o.17〕鉄骨構造に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.梁に使用する材料をSN400BからSN490Bに変更したので、幅厚比の制限値を大きくした。

2.H形鋼の梁の横座屈を抑制するため、圧縮側のフランジの横変位を拘束できるように横補剛材を取り付けた。

3.角形鋼管を用いて柱を設計する場合、横座屈を生じるおそれがないので、許容曲げ応力度を許容引張応力度と同じ値とした。

4.横移動が拘束されているラーメン架構において、柱材の座屈長さを節点間距離と等しくした。

 


1.梁に使用する材料をSN400BからSN490Bに変更したので、幅厚比の制限値を大きくした。

<解説>

答は×

幅厚比を大きくすると、幅が大きくなる、厚みが薄くなるため、よりペラペラな材となります。SN400BからSN490Bへ変更する(材料強度大きくする)と、より大きな力を負担できるようになります。そのときに、幅厚比が大きいと降伏耐力を迎える前に座屈してしまいます。

そのため、材料強度を大きくした場合、より幅厚比は小さくしないといけないです。

 

2.H形鋼の梁の横座屈を抑制するため、圧縮側のフランジの横変位を拘束できるように横補剛材を取り付けた。

<解説>

答は

鉄骨造のH形鋼の梁に、曲げモーメントが作用すると、弱軸方向にはらみ出す横座屈を起こしてしまいます。

この横座屈による横変位を押さえるために、横補剛材取り付けて横座屈を防止します。

 

3.角形鋼管を用いて柱を設計する場合、横座屈を生じるおそれがないので、許容曲げ応力度を許容引張応力度と同じ値とした。

<解説>

答は

角形鋼管や円形鋼管は、正方形や円形の断面形状をしていることから、横座屈を起こさないです。そのため、横座屈による許容曲げ応力度を低減する必要がありません。よって、許容曲げ応力度を許容引張応力度と同じ値とすることができます。

 

4.横移動が拘束されているラーメン架構において、柱材の座屈長さを節点間距離と等しくした。

<解説>

答は

横移動が拘束されているラーメン架構において、柱材の座屈長さは、節点間距離が最大となります。

また、横移動が拘束されていない場合の柱材の座屈長さは、節点間距離よりも大きくなります。

 


 

〔N o.18〕鉄骨構造の耐震設計に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.「耐震計算ルート1-1及び1-2」では、標準せん断力係数Coを0.2として地震力の算定を行う。

2.「耐震計算ルート1-2」では、偏心率が0.15以下であることを確認する。

3.「耐震計算ルート2」では、筋かいの水平力分担率の値に応じて、地震時応力を割り増す。

4.「耐震計算ルート3」では、筋かいの有効細長比や柱及び梁の幅厚比等を考慮して構造特性係数Dsを算出する。

 

1.「耐震計算ルート1-1及び1-2」では、標準せん断力係数Coを0.2として地震力の算定を行う。

<解説>

答は×

鉄骨造の耐震計算ルート1-1及び1-2は、標準せん断力係数Co=0.3以上としなければいけないので、設問は誤りとなります。

鉄骨造の耐震計算ルート1-1及び1-2は、比較的小規模の建築物が対象となるので、偏心率、剛性率、層間変形角等の確認をしなくても良い(ルート1-2は偏心率0.15以下の確認が必要)代わりに、標準せん断力係数Co=0.3以上とする必要があります。

 

2.「耐震計算ルート1-2」では、偏心率が0.15以下であることを確認する。

<解説>

答は

耐震計算ルート1-2の対象規模は、ショッピングセンターのような平屋で床面積が少し広い建物が対象となります。平面的に大きい建物である場合、荷重の偏在によって偏心率が大きくなることが考えられるため、「偏心率が0.15以下」の規定があります。

 

3.「耐震計算ルート2」では、筋かいの水平力分担率の値に応じて、地震時応力を割り増す。

<解説>

答は

筋かいは柱梁の架構内に配置する斜め材のことです。

筋かいが計画されている建物で「ルート2」の構造計算ルートの場合、地震力に対して負担の大きい筋かいは、より安全性の高い(余力のある)部材とする必要があります。

建物のある層全体の水平力Qに対する筋かいが負担する水平力Qb(水平力分担率=Qb/Q)の割合に応じて、地震時に作用する筋かいの応力を割りまして計算を行います。

 

4.「耐震計算ルート3」では、筋かいの有効細長比や柱及び梁の幅厚比等を考慮して構造特性係数Dsを算出する。

<解説>

答は

鉄骨造において、構造特性係数Dsを求めるためには、筋かいの有効細長比や柱及び梁の幅厚比等によって定まる各部材の部材ランクを求める必要があります。

全部材における各部材ランクの割合を求めて、その割合に応じて構造特性係数Dsが定まります。