~構造設計者こーじの構造解説blog~

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一級建築士試験 構造Ⅳ【平成26年(2014年)No.21~No.23】【基礎構造】

〔N o.21〕基礎及び地盤に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.擁壁のフーチング底面の滑動に対する抵抗力は、粘土質地盤より砂質地盤のほうが大きい。

2.受働土圧は、擁壁等の構造体が土から離れる側に移動した場合の圧力である。

3.地盤の許容支持力度は、標準貫入試験のN値が同じ場合、一般に、砂質地盤より粘土質地盤のほうが大きい。

4.直接基礎の基礎スラブの部材応力算定用の接地圧については、一般に、基礎スラブの自重は考慮しなくてよい。

 

1.擁壁のフーチング底面の滑動に対する抵抗力は、粘土質地盤より砂質地盤のほうが大きい。

<解説>

答は

擁壁は、滑動に対してフーチング(底板基礎)とフーチング下部地盤との間の摩擦抵抗によって抵抗します。

この摩擦抵抗力は、粘性土地盤より砂質地盤の方が抵抗力が大きいです。これは、砂質地盤の方がフーチングとの噛み合わせが良い為、摩擦係数が大きくなるためです。

 

2.受働土圧は、擁壁等の構造体が土から離れる側に移動した場合の圧力である。

<解説>

答は×

受動土圧は、構造体が土へ近づく(土が構造体を受けとめる)側に移動するときの土圧のことです。

 

3.地盤の許容支持力度は、標準貫入試験のN値が同じ場合、一般に、砂質地盤より粘土質地盤のほうが大きい。

<解説>

答は

標準貫入試験のN値は、砂質地盤なのか粘性土地盤なのかによって支持力の大きさが変わってきます。一般的に同じN値であれば、粘性土地盤の方が高い支持力となります。

また、一般的にN値50以上のような明確な支持層として取り扱えるのは、砂質土地盤の場合が多いです。逆に粘性土地盤でN値50以上の場合、とても固い地盤(泥岩層等)ということになります。

 

4.直接基礎の基礎スラブの部材応力算定用の接地圧については、一般に、基礎スラブの自重は考慮しなくてよい。

<解説>

答は

直接基礎の基礎スラブの接地圧に対する断面算定では、スラブの自重を考慮しないで計算します。

接地圧は、地盤から基礎スラブへ作用する反力(地反力)として、下から上(↑方向)に作用します。

一方、基礎スラブの自重は、上から下(↓方向)の力なので、接地圧とは反対の力となります。

もし、自重を考慮してしまうと、接地圧の力から自重分の力だけ引かれる形となり、スラブへ作用する↑方向の力が小さくなってしまいます。そうすると、基礎スラブとしては危険側の評価となってしまう為、自重は考慮しないで接地圧に対する基礎スラブの検討を行います。

 

 


 

〔N o.22〕地盤調査に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.超高層建築物の計画において、耐震設計上必要となる地盤の構造と動的特性を把握するために、地盤のP波及びS波の速度分布を調べるためのPS検層を行った。

2.地層構成に大きな変化がないと考えられる敷地の調査において、建築面積が約2,000m2の建築物に対して、ボーリング調査の数を4か所とした。

3.杭基礎が想定される地盤で、支持層が基礎底以深30m付近であったので、地震時の杭の水平抵抗の検討を目的として、支持層付近において孔内水平載荷試験を行った。

4.直接基礎が想定される地盤で、支持層の下部に位置する粘性土層の沈下量や沈下速度等を推定するため、圧密試験を行った。

 

1.超高層建築物の計画において、耐震設計上必要となる地盤の構造と動的特性を把握するために、地盤のP波及びS波の速度分布を調べるためのPS検層を行った。

<解説>

答は

PS検層とは、地盤の構造と動的特性を把握するために、地盤のP波及びS波の速度分布を調べるための試験のことです。主に、超高層建築物や免震構造等の動的解析の検討を行う際に必要な地盤における検査手法となっています。

 

 

2.地層構成に大きな変化がないと考えられる敷地の調査において、建築面積が約2,000m2の建築物に対して、ボーリング調査の数を4か所とした。

<解説>

答は

ボーリング調査は、敷地内の地盤の地層構成を把握するために行う調査です。一般的に、敷地内の地層構成の大きな変化が無いと想定される場合は、建築面積が500m2程度毎に1箇所とすることが目安となります。そのため、設問の内容は適切となります。

 

3.杭基礎が想定される地盤で、支持層が基礎底以深30m付近であったので、地震時の杭の水平抵抗の検討を目的として、支持層付近において孔内水平載荷試験を行った。

<解説>

答は×

孔内水平載荷試験は、地盤の水平方向の変形の度合い(水平地盤反力係数)を把握するための試験です。主に、杭基礎が想定される場合に行われます。これは、杭が地震時に水平方向に変形するためです。

杭の変形は、杭頭部が最も変形し、杭先端にいくほど変形は0となっていきます(杭先端はピン支持として考えてます)。そのため、杭頭付近であるGL-5~6m付近の地盤で試験を行うのが一般的です。

 

4.直接基礎が想定される地盤で、支持層の下部に位置する粘性土層の沈下量や沈下速度等を推定するため、圧密試験を行った。

<解説>

答は

粘性土層では、圧密沈下による沈下の影響を確認する必要があります。

設問の場合は、直接基礎直下の支持層の下部にある粘性土地盤がある場合のことです。

 

 


 


〔N o.23〕杭基礎に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.直接基礎と杭基礎を併用した基礎形式であるパイルド・ラフト基礎は、直接基礎として十分な支持力はあるが沈下が過大となる場合等に採用されることがある。

2.支持層が傾斜した地盤においては、杭径が同じであっても、各杭が負担する水平力は杭長に応じて異なる値として設計する。

3.砂質地盤における杭の極限周面摩擦力度は、打込み杭より場所打ちコンクリート杭のほうが小さい。

4.応答変位法は、地震時の杭頭慣性力と地盤変位による応力を用いて計算する方法であり、地震時に液状化しやすい軟弱地盤における杭の検討に適している。

 

1.直接基礎と杭基礎を併用した基礎形式であるパイルド・ラフト基礎は、直接基礎として十分な支持力はあるが沈下が過大となる場合等に採用されることがある。

<解説>

答は

パイルド・ラフト基礎は、直接基礎に杭基礎を併用した基礎形式です。併用といっても、建物重量のほとんどを直接基礎(べた基礎)で負担します。一方、杭基礎は摩擦杭として利用して、沈下の抑制する役割があります。

 

 

2.支持層が傾斜した地盤においては、杭径が同じであっても、各杭が負担する水平力は杭長に応じて異なる値として設計する。

<解説>

答は

杭基礎において、支持層が傾斜している場合、支持層までの深さに合わせて杭長を変えることが一般的です。

杭長が変わる場合では、地震時に各杭の負担する水平力は杭長に応じて変わります。杭長が短い方が剛性が高くなることから負担する水平力は大きくなり、杭長が長い方が剛性が小さくなり負担する水平力はも小さくなります。

 

3.砂質地盤における杭の極限周面摩擦力度は、打込み杭より場所打ちコンクリート杭のほうが小さい。

<解説>

答は×

杭の周面摩擦力の大小は、下記の通りとなります。

打ち込み杭:杭周面がつるつるの状態であるため、周面摩擦力が小さい。

埋込み杭(セメントミルク工法):杭と孔壁との間を杭周固定液にて固化するので、周面摩擦力が比較的大きい。

場所打ちコンクリート杭:杭周囲がザラザラした状態であるため、周面摩擦力が一番大きい。

 

4.応答変位法は、地震時の杭頭慣性力と地盤変位による応力を用いて計算する方法であり、地震時に液状化しやすい軟弱地盤における杭の検討に適している。

<解説>

答は

一般的な杭の検討方法は、地震時の杭頭慣性力(水平力)に対して計算を行います。一方、応答変位法は、地震時の杭頭慣性力+地盤変位による応力も考慮して計算を行います。特に、液状化しやすい軟弱地盤は、弱い地盤であることから、地盤変位が特に大きくなります。そのため、液状化しやすい軟弱地盤では、応答変位法による検討が適しています。