~構造設計者こーじの構造解説blog~

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令和6年能登半島地震(1/6現在での概要)

2024年1月1日16時10分頃に石川県能登地方で、最大震度7を記録した令和6年能登半島地震が発生しました。また、地震による津波も発生し、沿岸部への被害も多数報道で見受けられますが、どの程度の被害かは今後の調査で分かってくるものと見受けられます。

新年を迎えた元日に発生したということもあり、新年の御祝の最中で発生した地震でした。

私も、実家へ帰省して丁度テレビを観ていた時に緊急地震速報が鳴ったので、とてもビックリしました。実家周辺は震度3でしたが、幸い特に揺れは感じませんでした。

 

まずは、今回の地震で犠牲となられた方々に心から哀悼の意を表すとともに、被害に遭われた方々に、心よりお見舞い申し上げます。

また、一構造設計者としても、非常に考えさせられる出来事であり、これからの構造設計に対してより一層真剣に向き合っていきたいと思っております。

 

※現在も被害の全容が把握できていないことから、政府・気象庁等からの発表が分かり次第、更新していきたいと思います。

 

 

令和6年能登半島地震の概要

地震の概要

地震の発生日時:1月1日16時10分頃

震央地名:石川県能登地方

深さ:16km(暫定値)

マグニチュード:M7.6(暫定値)

最大深度:震度7(石川県志賀町)

 

ちなみに、近年における断層型地震と言われている大地震のマグニチュードは下記の通りとなります。

 

1995年1月17日 阪神淡路大震災 M7.3

2004年10月23日 新潟県中越地震 M6.8

2007年7月16日 新潟県中越沖地震 M6.8

2016年4月14日・4月16日 熊本地震 M6.5・M7.3

 

震度分布

今回の地震では、石川県能登地方の志賀町で震度7の揺れを観測されると共に、石川県加賀地方や富山県、新潟県、福井県で震度5強~震度6強の非常に強い揺れが観測されました。また、震源から遠く離れた北海道や九州でも震度1以上の揺れが観測され、震源が浅いのにも関わらず、遠い範囲まで揺れが到達していることを考えると、今回の地震がいかに大きい規模のものであったかが分かると思います。

図1 令和6年能登半島地震の震度分布(気象庁HPより)

図2 令和6年能登半島地震の震度分布(震源地周辺拡大)(気象庁HPより)

参照URL:https://www.jma.go.jp/bosai/map.html#9/37.012/137.752/&elem=int&contents=earthquake_map

 

余震等の地震(震度5強以上:2024年1月6日現在)

※ここでは、1月1日16時10分頃に発生した地震を本震として取り扱います。

本震の地震の4分前の16時6分にも、M5.5の地震(前震か?)が発生していましたが、本震後の余震も1/6までで1000回以上、震度5強以上の地震も6回に上ります(前震(?)・本震は除く)。

 

図3 令和6年能登半島地震の震度5以上を観測した発生状況(2024年1月6日現在)(気象庁HPより)

 

近年の地震活動

気象庁で新しく開設されている「令和6年能登半島地震の地震活動と防災事項ポータルサイト」に、石川県能登地方の近年の地震活動の概要が記載されていました。その概要をまとめると下記のようになります。

  • 2018年頃から地震(地殻内)が増加傾向であった。
  • 2020年12月から地震活動が活発になり、2023年5月頃からさらに活発になった(群発地震)。
  • その後、しばらくは地震活動が治まっていたが、2024年1月1日のM7.6の地震により、最大震度7を観測するなど能登半島を中心に強い揺れとなり、地震活動の更なる活発化とともに地震の発生領域も広がっていった。

 

地震のメカニズムは地下の流体が原因?

今回の地震は、2011年に発生した東北地方太平洋沖地震のような海洋型地震ではなく、断層型地震(逆断層型)による地震となります。

近年の地震活動でも記載されている通り、2018年ごろから地震が増加し始めていましたが、その理由として、プレート(マントル)から上昇してきた流体(水)が溜まることで、岩盤へ何かしらの力が加わることで断層がずれてしまい、地震が発生したと考えられています。ただし、あくまで専門家内での仮説であり、今後の調査・研究を待つべきかと思われます。

news.yahoo.co.jp

図4 想定される地震の発生メカニズム

 

今回の地震による被害

建物の倒壊による被害

今回の地震によって、多くの木造住宅の倒壊が見受けられました。報道での映像を見る限りですが、築50年以上の築年数が経った住宅も多く見受けられ、そのような住宅が倒壊してしまっているのかなと思われます。

ただ、新耐震基準(1981年)以降に建てられた住宅であっても、被害が大きいとの調査もあるみたいです。新耐震基準といっても、木造住宅は、構造計算をしておらず壁量計算のみの確認であり、壁量の剛性バランスの確認を行う四分割法は2001年の基準法改正以降で定められたので、新耐震基準の住宅だからといって、一概に絶対安全であるとも言い難いのもあるのかなと感じています。

www.yomiuri.co.jp

 

津波による被害

津波による被害については、まだ全貌が見えていない状況かと思われます。

地震発生後に、津波警報が発表され、その後大津波警報に切り替わりました。津波の観測では、石川県輪島市で1.2m、富山県富山市で0.8mとなっていますが、報道等では、2階床付近まで津波が押し寄せた跡が見られた映像もあり、実際は2m以上の津波が押し寄せていた箇所もあると思います。

www.yomiuri.co.jp

液状化による被害

また、今回の地震では、各地で液状化現象も見られました。福井県から新潟県にかけての広い範囲で見られています。

液状化は、沖積層(比較的新しい年代の地盤)の砂質地盤が地表付近にあり、地下水位が高い場合において、地震により地盤が揺れると地下水と共に砂や泥が噴き出す現象です。

新潟県では、1964年に発生した新潟地震でも液状化による被害が顕著でしたが、今回の地震でも液状化が見られたということになります。

また、震度4を観測した富山県魚津市でも液状化が発生しており、港周辺の駐車場の複数箇所で砂が混じった水が噴き出した痕跡が確認されているとのことです。震度4という中程度の震度でも液状化が発生するのが、個人的には少しびっくりしました。

www3.nhk.or.jp

 

取り急ぎ、現状で私自身が気象庁の情報や報道等で見た限りのまとめを載せております。今後の調査や報道等で新たに分かる情報もあると思いますので、その際は、更新していければと思っております。