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一級建築士試験 構造Ⅳ【令和元年度(2019年度)No.27~No.29】【建築材料】

一級建築士試験 構造Ⅳ【令和元年度(2019年度)】の建築材料について解説します。

ここでは、木造、コンクリート、鋼材の各材料について問われています。


 

〔No.27〕木材に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1 .木表は、一般に、木裏に比べて乾燥収縮率が大きいので、木表側に凹に反る性質がある。

2 .木材の強度は、一般に、同じ乾燥状態であれば密度が大きいものほど高い。

3 .含水率が繊維飽和点以下の木材の乾燥収縮率は、一般に、「年輪の接線方向」より「年輪の半径方向」のほうが大きい。

4 .構造用材料の弾性係数は、一般に、気乾状態から含水率が繊維飽和点に達するまでは、含水率が大きくなるにしたがって小さくなる。

 

1 .木表は、一般に、木裏に比べて乾燥収縮率が大きいので、木表側に凹に反る性質がある。

<解説>

答は○

木表は、樹皮の方向側(表面側)で、乾燥収縮率が大きいことから、木表側に凹の反りが生じます。

 

2 .木材の強度は、一般に、同じ乾燥状態であれば密度が大きいものほど高い。

<解説>

答は○

木材の強度は、密度が大きいほど繊維が緻密であることから強度がより大きいです。

 

3 .含水率が繊維飽和点以下の木材の乾燥収縮率は、一般に、「年輪の接線方向」より「年輪の半径方向」のほうが大きい。

<解説>

答は×

乾燥収縮率の大きさは、接線方向>半径方向>繊維方向の順の大きさとなります。これは、木材の収縮異方性に起因するものです。

 

4 .構造用材料の弾性係数は、一般に、気乾状態から含水率が繊維飽和点に達するまでは、含水率が大きくなるにしたがって小さくなる。

<解説>

答は○

気乾状態とは、木材が空気中の湿度と平衡状態になった状態のことをいい、含水率が約15%程度の状態です。木材の弾性係数は、繊維飽和点以下の場合、含水率が大きいほど小さくなります。

 

 

〔No.28〕コンクリートの一般的な性質に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1 .コンクリートの圧縮強度は、水セメント比が小さいほど高い。

2 .コンクリートの中性化速度は、水セメント比が小さいほど速い。

3 .コンクリートのヤング係数は、コンクリートの圧縮強度が高いほど大きい。

4 .水和熱によるコンクリートのひび割れは、単位セメント量が少ないコンクリートほど発生しにくい。

 

1 .コンクリートの圧縮強度は、水セメント比が小さいほど高い。

<解説>

答は○

水セメント比が小さいということは、セメントの比率が多いということです。セメントの比率が多いと、よりセメントが緻密に構成されていることから、コンクリートの圧縮強度は高くなります。

 

2 .コンクリートの中性化速度は、水セメント比が小さいほど速い。

<解説>

答は×

水セメント比が小さいということは、セメントの比率が多いということです。セメントの比率が多ければ、コンクリートのアルカリ性により空気中の炭酸ガスの影響を受けにくくなり、中性化速度は遅くなります。

 

3 .コンクリートのヤング係数は、コンクリートの圧縮強度が高いほど大きい。

<解説>

答は○

コンクリートの圧縮強度が高いということは、それだけセメントが緻密であり、硬くなります(=ヤング係数が大きくなる)。

 

4 .水和熱によるコンクリートのひび割れは、単位セメント量が少ないコンクリートほど発生しにくい。

<解説>

答は○

水和熱とは、水とセメントが水和反応を起こし、硬化する際に発生する熱のことです。

この水和熱により、温度の上昇、降下がコンクリートの変形(膨張・収縮)を引き起こし、コンクリート周囲が拘束されているとコンクリートに引張応力が作用し、ひび割れが発生します。

このひび割れを少なくするには、単位セメント量が少なくなる必要があります。これは、単位セメント量が少ないと、水和反応による水和熱も少なくなる為です。

 

〔No.29〕鋼材に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1 .建築構造用圧延鋼材(SN材)は、板厚が40 mmを超えても、40 mm以下の材と同じ基準強度が保証されている。

2 .建築構造用圧延鋼材(SN材)C種は、B種の規定に加えて板厚方向の絞り値の下限が定められており、溶接加工時を含め板厚方向に大きな引張力が作用する角形鋼管柱の通しダイアフラム等に用いられている。

3 .板厚が一定以上の建築構造用冷間ロール成形角形鋼管BCR295 については、降伏比の上限値が定められている。

4 .建築構造用ステンレス鋼材SUS304Aは、降伏点が明確ではないので、0.1 %オフセット耐力をもとに基準強度が定められている。

 

1 .建築構造用圧延鋼材(SN材)は、板厚が40 mmを超えても、40 mm以下の材と同じ基準強度が保証されている。

<解説>

答は×

鋼材の基準強度は、板厚によって変わります。

SN400材の場合⇒板厚40mm以下:235N/mm²、40mm超:215N/mm²

SN490材の場合⇒板厚40mm以下:325N/mm²、40mm超:295N/mm²

つまり、厚くなるほど基準強度は小さくなります。

板厚が厚くなっても同じ基準強度がとする場合は、TMCP鋼を使用する必要があります。この鋼材は製造の際に行う熱加工の温度を制御し、冷却のムラを無くすことで対応しています。

 

2 .建築構造用圧延鋼材(SN材)C種は、B種の規定に加えて板厚方向の絞り値の下限が定められており、溶接加工時を含め板厚方向に大きな引張力が作用する角形鋼管柱の通しダイアフラム等に用いられている。

<解説>

答は○

建築構造用圧延鋼材(SN材)C種は、B種の規定に加えて板厚方向の絞り値の下限が定められています。これは、厚さ方向に力が作用した時に、表面に亀裂が入ってしまうラメラテア現象を防ぐ効果があります。一般的に、板厚方向に大きな引張力が作用する角形鋼管柱の通しダイアフラム等に用いられています。

 

3 .板厚が一定以上の建築構造用冷間ロール成形角形鋼管BCR295 については、降伏比の上限値が定められている。

<解説>

答は○

建築構造用冷間ロール成形角形鋼管BCR295は、厚さが12mm以上の場合、降伏比の上限値を定められており、降伏比は90%以下と定められています。

 

4 .建築構造用ステンレス鋼材SUS304Aは、降伏点が明確ではないので、0.1 %オフセット耐力をもとに基準強度が定められている。

<解説>

答は○

建築構造用ステンレス鋼SUS304Aは、明確な降伏点が存在しません。そのため、応力-ひずみ曲線において、0.1%のひずみの点からヤング係数の傾きで引っ張った斜めのラインと応力-ひずみの曲線が交わった点を降伏点とします。これを0.1%オフセット耐力といいます。

ステンレス鋼の応力-ひずみ曲線