~構造設計者こーじの構造解説blog~

一級建築士の構造解説・過去問解説を行っています。某組織設計事務所9年→構造設計事務所。10年目。

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令和2年一級建築士製図試験について ~構造的観点 その2~ 架構形式とスパン割り

り前回の「令和2年一級建築士製図試験「高齢者介護施設」について ~構造的観点~」にて、製図試験の構造的観点についてざっくりお話しさせて頂きました。

 

今回は、前回のお話の中であえて書かなかった、「鉄筋コンクリート造」の場合の

・架構形式

・スパン割り

について書いていこうと思います!!

 

なぜ、前回で全部書かなかったのかというと、前回のタイミングだと学科通過者の方々が、まだあまり記述の勉強などをしていないタイミングで話すよりも、一通り記述も製図も勉強したかな~というタイミングの方がいいと思ったので、今回解説していきます。

 
 <架構形式>
 

製図試験の場合、鉄筋コンクリート造の架構形式としては、「ラーメン架構」とすることが多いです。

そもそも、「ラーメン架構」とはどういった架構形式かイメージできますか?

柱と梁が剛接合で接合されており、柱梁の架構に荷重が作用すると曲げモーメントで抵抗する架構形式です。

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よく、製図試験の記述で、
「架構形式は、平面計画の自由度が高く、架構の靱性(塑性変形能力)が大きいラーメン架構として計画した。」
と記述することが多いと思います。実際、この文章を覚えてしまえば記述はかけてしまうかもしれませんが、せっかく学科試験で勉強した構造の知識でちょっと深堀りしていきます。

 

・「平面計画の自由度が高い」とは?

ラーメン架構は柱梁で構成されているので耐震壁が無い構造です。耐震壁があると各諸室のプランニングを行うときにどうしても制約が発生してしまいます。また、実務的には将来改修等により部屋を大きくしたいといった場合に耐震壁があると部屋を大きくしたくてもできないといった場合もあります。
なので、ラーメン架構であれば平面計画の制約が無く自由度が高い設計を行うことができます。

 

・「架構の靱性(塑性変形能力)が大きい」とは?

受験生は、製図試験を勉強しているので忘れている人も多いと思いますが…ラーメン架構は、耐震壁のある架構形式と比べて靱性が大きい(=塑性変形能力が大きい)です。
下図にラーメン架構の場合と耐震壁付ラーメン架構の場合の力と変形の関係を示します。
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ラーメン架構では、耐震壁付ラーメン架構と比べると負担できる力(耐力)は小さいですが、柱梁の部材の靱性が耐震壁と比べると大きいことから、変形能力は大きいです。
一方、耐震壁付ラーメン架構では、耐震壁がある為ラーメン架構よりも大きい力を負担する(耐力が大きい)ことができますが、「せん断破壊」をするため変形能力は小さいです。
また、この建物の耐力や靱性能力を表した係数が「構造特性係数Ds」です。ラーメン架構では、建物の耐力は小さいですが、塑性変形能力が大きいことから、Ds値は小さい値となります。一方、耐震壁付ラーメン架構では、Ds値は大きい値となります。
ただし、ラーメン架構と耐震壁付ラーメン架構のエネルギー吸収(グラフに囲まれた面積)が同じであれば、構造耐力上同じ建物性能であるとされています。なので、どちらが良い悪いということはありません。

 
 <スパン割り>
 

製図試験で計画するスパン割りは、6~8m(長くても9m)で計画することが多いと思いますが、一般的に鉄筋コンクリート造のスパン割りは、6~8mスパンが一番経済的だからです。
また、柱スパンが10mを超えると柱と柱を繋ぐ大梁をプレストレストコンクリート梁としていますが、その理由としては、梁のスパンが大きくなると過大な曲げひび割れが発生してたわみが大きくなってしまうからです。ひび割れが梁主筋の位置まで達してしまうと錆が発生しますし、たわみが大きくなると歩いたりするときに揺れを感じてしまいます。
プレストレストコンクリート梁は、PC鋼棒やPCより線などの緊張材により、あらかじめ圧縮力をかけられた梁です。引張力には弱いコンクリートの弱点を補うことで、ひび割れやたわみを抑制することができます。そういった理由で、10mを超える長スパンに対してはプレストレストコンクリート梁で計画をします。

 

実際の製図試験では、記述が書ければOKなのですが、せっかく学科試験で勉強した内容と絡めて解説していきました!!また気づいたら他の内容でも書いていきます。